洋上風力のコストを削減する基礎工法、設置可能エリア拡大にも期待:自然エネルギー
日立造船らが日本での洋上風力発電の基礎施工に、欧州で採用されている工法の適用を開始。日本の沿岸地域における発電所の設置可能範囲の拡大や、EPCのコストを削減できるメリットが期待できるという。
日立造船は、京都大学防災研究所、東洋建設と共同で、着床式の洋上風力発電施設の基礎施工における「サクションバケット基礎工法」の適用に取り組んでいる。
着床式洋上風力発電施設の代表的な工法で、欧米で実績のあるモノパイル基礎工法は、杭(くい)の根入れに適切な堆積層の厚みが30m(メートル)程度必要だ。しかし、日本の沿岸海域は岩礁や十分な堆積層の厚みが見込めない海域が散見され、基礎を築く際に、技術と費用の両面で制約を受ける。サクションバケット基礎工法は、欧米で堆積層の厚みが10m程度でも基礎を築いた実績があり、日本の沿岸海域でも条件に適合することが確認できれば、設置可能な範囲が広がることになる。
まモノパイル基礎工法のように杭を海底に打ち込む方式とは異なり、バケット内部を排水することによって、静水圧以下の状態にし、海底面下に貫入する。一方で、発電事業が終了し、撤去が必要となった場合、貫入時とは逆方向に加圧することで、完全に撤去することができる。
さらに、堆積層が薄い海域で用いられてきた重力式基礎と比較し、コストを抑えることが可能だ。モノパイル基礎工法との比較では、設置時に杭を打設するための大型重機が不要であり、構造物の鋼材を軽量化できる。日立造船らが想定している1ウインドファーム(15基)の試算では、モノパイル基礎工法の工期より1年短縮することができ、EPC(設計・調達・建設)にかかる費用も7%削減できるという。
今回の取り組みで、日立造船はサクションバケット基礎工法の設計検証方法の研究開発およびコスト調査と分析を実施する。京都大学防災研究所は、同工法の構造物と海底地盤の挙動における研究開発を担当。東洋建設は同工法の施工に関する技術研究開発を行う。
日立造船は、循環型社会の実現に向けた再生可能エネルギーの普及を進めるため、2012年より洋上風力発電の事業化に取り組んでいる。その中でも今後、着床式洋上風力発電の導入量は増加し、日本風力発電協会のロードマップによると、2030年には累計580万kW(キロワット)になると想定されている。同社は着床式洋上風力発電に適した日本の海域を選定し、日本の洋上環境に合わせた設計・施工方法の確立を図り、サクションバケット基礎工法の実用化を目指す。
なお、今回の取り組みは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「風力発電等技術研究開発/洋上風力発電等技術研究開発/洋上風力発電システム実証研究(低コスト施工技術調査研究)」の委託を受け、実施している。
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