スマートシティの“データ基盤”をNECが提供へ 「FIWARE」を活用:スマートシティ
NECは2018年4月から、スマートシティ向け「データ利活用基盤サービス」をの提供を開始する。EUで基盤ソフトウェアとして採用されている「FIWARE」を活用している。
NECは、EU(欧州連合)の次世代インターネット官民連携プログラム(FI-PPP)で開発・実装された基盤ソフトウェア「FIWARE」(ファイウェア)を活用したスマートシティ向け「データ利活用基盤サービス」を、自治体やエリア開発事業者向けに2018年4月から販売開始する。
同サービスは、地域の活性化や安全など、都市における課題解決に向けて、都市や地域に分散して存在するさまざまな分野・領域のデータ(防災、観光、交通、エネルギー、環境など)や、IoT技術などを活用して収集したデータをクラウド上で蓄積し、共有・分析・加工して提供する。
昨年、官民データ活用推進基本法が施行され、官民データ活用がIT政策の軸となり、都市の課題解決の手段として期待されている。こうした中、様々な分野・領域のデータ(防災、観光、交通、エネルギー、環境など)を、地域の複数のステークホルダー間で共有・利用するニーズが高まっている。
ただし、データを一括管理・運用し、利活用を促進するデータ流通の仕組みが必要になる。欧州では公共サービスを提供する自治体や企業など、業種を越えたデータ利活用やサービス連携を促すため、データ流通の中核を担うクラウドプラットフォームとして、FIWAREが開発されている。
NECはこのFIWAREの開発に2011年から携わっており、今回販売開始するデータ利活用基盤サービスは、FIWAREを基に、その品質を独自に検証し、セキュリティを強化するなど、都市経営やビジネスに利用可能な基盤としてサービス提供するものだ。
都市のデータを同サービスに統合して収集・蓄積し、データを相互共有することで、分野を横断した新しいサービスの創出を実現する。これにより、収集したデータを一覧化するデータ公開サイトや都市の見える化に必要な地理情報など、スマートシティの実現に必要な各種機能を標準サービスとして提供する。
同サービスでは多様なデータの相互運用の実現に向けて、データ形式をそろえるための“標準データモデル”を規定し、さらにNGSI(Next Generation Service Interfaces)を含むグローバル標準のオープンAPIを準備している。これらにより、分野・領域、地域間で収集したデータの統合・蓄積・加工をスムーズに行うことができ、地域課題に応じた新たなサービスの構築が可能という。
また、同サービスはNECのクラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」上に搭載し、NECのAIやセキュリティなどのサービスを組み合わせる。NECの持つOSS(Open Source Software)の知見を生かし、オープン性を確保しながら、多くのOSSの組み合わせ検証を行う。同サービスに採用するOSSは、全てNECがワンストップでサポートする。
なお、同サービスは先行して、高松市や加古川市(兵庫県)で運用を開始。高松市では防災・観光分野、加古川市では安全・安心分野における課題解決に活用し、都市におけるデータを利活用したスマートシティの実現を目指すという。
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