期待のペロブスカイト太陽電池、耐久性10倍のブレークスルー:太陽光
東京大学はペロブスカイト太陽電池の耐久性を10倍に高めることに成功。実用化課題である耐久性を向上し、大幅な長寿命化に貢献する技術だという。
東京大学は2018年3月9日、有機半導体に「リチウムイオン内包フラーレン」を混ぜることで、従来比10倍の耐久性をもつペロブスカイト太陽電池を開発することに成功したと発表した。ペロブスカイト太陽電池の実用化課題である耐久性を向上し、大幅な長寿命化に貢献する成果だという。
ペロブスカイト太陽電池は現在主流のシリコン系の太陽電池と比較し、高い変換効率と低い製造コストが期待できるため、次世代の太陽電池として注目されている。世界中で活発に研究開発が進んでおり、20%近い変換効率を記録する成果も登場している。このように効率面では実用化への道筋がつきはじめているが、耐久性についての課題が残っている状況だ。
耐久性が低くなる原因の1つは、有機金属ペロブスカイトが水や酸素に対して非常に不安定な性質を持つという点だ。ペロブスカイト太陽電池の発電効率の向上は、電荷選択層であるホール輸送層に有機半導体を用いたことが大きく寄与している。しかし、有機半導体そのもののホール輸送特性は十分でないため、リチウム塩を混ぜ(ドープする)、酸素を含む空気中で光を当てて有機半導体から電子を引き抜く(ホールをドープする)必要がある。しかし、リチウム塩は吸湿性をもち、水分を引き寄せてしまう。つまり本来、水や酸素を避けたいはずのペロブスカイト太陽電池に、吸湿性材料や酸素が必要になるという矛盾があった。
そこで東京大学の研究グループは、従来のリチウム塩を用いず、リチウムイオン(Li+)をフラーレンC60の殻(から)で包んだ新しいリチウム塩(リチウムイオン内包フラーレン、Li+@C60)を用いた。これにより、ペロブスカイト太陽電池の耐久性を10倍向上させることに成功した。リチウムイオン内包フラーレンは、日本のベンチャー企業が開発したもので、Li+が疎水性のC60の中にあるため吸湿性が低く、高い電子親和力を持つ。さらに、電子を引き抜く酸素が不要で、有機半導体spiro-MeOTADから電子を引き抜くことが可能という。
従来のペロブスカイト太陽電池は未封止の場合、リチウム塩を含む有機半導体層が周囲の水を引き寄せ、50時間で動作しなくなる。一方、今回開発したリチウムイオン内包フラーレンを含むペロブスカイト太陽電池は、未封止の素子では約50時間かけて徐々に変換効率が上がり、最高効率点から約500時間かけて効率が低下することを確認できた。なお、最高点でのエネルギー変換効率は16.8%だった。
さらに、素子を封止した場合の実験では、実用化の目安となる疑似太陽光連続照射1000時間で、効率の低下が10%以内という要件を満たすことができたという。研究グループは、ペロブスカイト太陽電池の長寿命化を可能とする材料を発見したことにより、実用化へ向けた研究の促進が期待されるとしている。
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