既設地熱を出力増強、ケニアに約100億円の円借款:自然エネルギー
国際協力機構はケニア政府との間で、「オルカリアI一、二及び三号機地熱発電所改修事業」を対象とした円借款貸付契約に調印した。現在の発電出力が45MW(メガワット)であるオルカリアI地熱発電所を、約51MWに改修する事業となる。
国際協力機構(JICA)は、このほどナイロビでケニア政府との間で、「オルカリアI一、二および三号機地熱発電所改修事業」を対象とした100億7700万円を限度とする円借款貸付契約に調印したと発表した。現在の発電出力が約45MW(メガワット)であるオルカリアI地熱発電所(15MW×3基)を、約51MW(約17MW×3基)に改修する事業となる。
ケニアでは堅調な経済成長や未電化地域の電化が進められており、電力需要は今後大幅に増加することが見込まれている。2017年時点での同国の電源構成は、約36%が水力発電、約35%が火力発電で占められており、干ばつなど天候によって水力発電による電力供給が不安定になること、火力発電の燃料である石油を輸入に依存しているため、同国政府の経常収支を圧迫していることが課題となっている。
一方で、同国には大規模な地熱発電のポテンシャルがあると推定されており、天候に左右されない安定かつ環境負荷の低い発電方式として地熱資源開発がなされてきた。日本企業が1980年代に建設した同事業の対象となるオルカリアI地熱発電所もその一例であるが、同発電所の1〜3号機は建設後30年以上が経過しており老朽化によって稼働率の低下や維持管理費の増加が発生していた。
同事業では、既存発電施設の供給能力を維持・増強することにより、電力供給安定化に貢献することを目指す。さらに、火力発電所の運転を増加した場合に比べて、大気汚染物質およびCO2排出が大幅に抑制できるとする。
また、JICAは技術協力として、地熱開発の技術向上を目的とした「地熱開発のための能力向上プロジェクト」(2013年9月〜2019年2月)を実施している。さらに、2016年1月からは電力分野における民間資本の参入を促進するためのアドバイザーも派遣しており、JICAはソフト面、ハード面の両面からケニアの電力供給安定化を支援しているとした。
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