石炭火力のCO2排出を大幅削減、アンモニアの20%混焼に成功:蓄電・発電機器
IHIは、アンモニアと微粉炭を混合して燃焼する実証試験を実施し、世界最高水準となる熱量比率20%のアンモニア混焼に成功した。アンモニアを石炭火力発電の副燃料として利用することで、CO2排出の大幅削減が期待できる。
IHIは、アンモニアと微粉炭を混合して燃焼する実証試験を2017年12月に実施し、投入熱量10MW(メガワット)の燃焼設備として世界最高水準となる熱量比率20%のアンモニア混焼に成功したと発表した。アンモニアを副燃料として用いることにより、石炭火力発電から排出されるCO2排出の大幅削減が可能となる。
アンモニアは、水素含有量の高さ、運搬・貯蔵の容易さなどから低炭素社会を実現する新たなエネルギー源として注目を集める。同社は、アンモニアのバリューチェーン構築を目指し、アンモニアを燃料とするガスタービンやボイラーの燃焼技術、固体酸化物形燃料電池(SOFC)のシステム化などの取り組みを進めてきた。
同実証では、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の委託研究課題「アンモニア直接燃焼」において実施。これまでの取り組みで同社が培ったノウハウを活用し、既設の石炭火力発電所であってもアンモニア供給配管の設置など小規模な改造で混焼に対応するという。
一方、アンモニアと微粉炭の混焼では窒素酸化物(NOx)の排出濃度が上昇する課題があった。同社ではアンモニアの供給方法などを工夫し、従来の石炭火力発電とNOx排出濃度を同程度に抑制することに成功した。
今後、アンモニアがボイラー性能へ与える影響の評価や運転条件の選定により、NOxをさらに低下させる可能性を検討するとし、アンモニアを利用した低炭素社会の実現に向けた技術開発を進める方針だ。
関連記事
- 次世代石炭火力発電IGCCの一貫生産体制、長崎で完成
三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は、石炭ガス化複合発電(IGCC)プラントの主要設備を製作する「石炭ガス化炉工場」を完成させ、石炭ガス化炉の製造作業を開始した。 - 次世代石炭火力を2020年代に実現、研究開発が最終フェーズに
高効率かつCO2排出量が少ない次世代火力発電の実用化に向けた開発が進んでいる。NEDOは次世代石炭火力の1つである「先進超々臨界圧火力発電(A-USC:Advanced-USC)」の実用化に向けて、高温蒸気に耐えられるニッケル(Ni)基合金の技術開発に着手した。事業期間は4年間で、その後2020年代にA-USCを採用した火力発電所の稼働を目指す方針だ。 - 世界最大のCO2回収プラントが稼働、石炭火力発電のCO2で原油を40倍に増産
米国テキサス州の石炭火力発電所で世界最大のCO2回収プラントが運転を開始した。発電所から排出するCO2の90%以上を回収したうえで、130キロメートル離れた場所にある油田までパイプラインで供給。地中にCO2を圧入すると、分散する原油と混ざり合って生産量を40倍に増やすことができる。 - 石炭火力発電に国の方針が定まらず、原子力と合わせて見直し急務
環境省が石炭火力発電所の新設に難色を示し続けている。国のCO2排出量の削減に影響を及ぼすからだ。しかし最終的な判断を担う経済産業省は容認する姿勢で、事業者が建設計画を変更する可能性は小さい。世界の主要国が石炭火力発電の縮小に向かう中、日本政府の方針は中途半端なままである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.