再エネは主力電源、原子力は「脱炭素化の選択肢」――日本の長期エネルギー戦略:法制度・規制(2/2 ページ)
経済産業省は日本の2050年までの長期エネルギー戦略に対する提言をまとめた。脱炭素化の方針を掲げるが、実現に向けたシナリオは一本化せず“複線”とし、総花的な内容となっている。
総花的となった内容だが、大きな変更点がある。これまで、エネルギー基本計画における電源構成などの策定に向けては、電源別にコスト検証を行うというアプローチを採用していた。しかし今後、エネルギー転換および脱炭素化に向けた選択肢を的確に整理するため、アプローチの方法を「脱炭素化エネルギーシステム間でのコスト・リスク検証」に変更。これにより、電力・熱・輸送といった格エネルギー分野における、さまざまな脱炭素化システム・技術の成熟度などを、横断的に把握できるようにする狙いだ。
例えば電力システムにおける、脱炭素化エネルギーシステムの例としては再生可能エネルギーと蓄電システムや、水素製造システムとの組み合わせが挙げられる。これらのコストや技術的成熟度を個別に検証していく。
このような、さまざまな脱炭素化エネルギーシステムを個別に検証していく背景には、先述したように、世界的なエネルギー情勢に関する、地政学・地経学情勢、技術開発競争の帰趨(きすう)が不透明という点がある。2050年という長期展望であることを踏まえ、「常に技術と情勢を全方位で観察しつつ、開発目標と政策資源の重点を設定する」とした。
提言ではこうしたアプローチを「科学的レビューメカニズム」と称し、今後のエネルギー政策に取り入れていく方針を示した。英国は2050年に向けたシナリオを5年ごとにレビューする仕組みを導入しており、専門組織が科学、経済、政策の観点から分析を提言し、シナリオの修正を行っている。米国ではエネルギー省(DOE)の下にあるエネルギー情報局(EIA)と、エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)がこうした役割を担っている。
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