アンモニアをクリーン燃料に変える新触媒、熊本大が開発:蓄電・発電機器
熊本大学の研究グループが燃えにくい性質のアンモニアを、有毒ガスを出さずに燃焼させられる新触媒を開発。化石燃料の代替としての利用など、アンモニアの用途の幅を広げる成果だという。
熊本大学の研究グループは2018年4月、有毒ガスを排出せずにアンモニアを効率よく燃焼できる新しい触媒を開発したと発表した。低コストに製造でき、燃料としてのアンモニア利活用の幅を広げられる可能性があるという。
近年、化石燃料に変わる新燃料の1つとして、燃焼時にCO2を一切排出しないアンモニアが注目されている。CO2排出量の削減を目的に、石炭火力の燃料としてアンモニアを混焼する実証実験も行われている。また、水素を低コストに貯蔵・輸送するためのエネルギーキャリアとしての利用も期待されているところだ。
ただし、アンモニアは窒素を含んでいるため、燃焼時に大気汚染などにつながる窒素酸化物が生成される可能性がある。さらに、燃焼開始温度が高く、燃えにくい点が課題となっている。
熊本大学の研究グループは、こうしたアンモニアの利用に関する問題を解決する「触媒燃焼法」について研究を進めてきた。これは燃料などを燃焼処理する際に、化学反応を促進したり抑制したりする物質を触媒として加える手法だ。その中で今回、アンモニアの燃焼性を向上させると同時に、窒素酸化物の発生を抑える新しい触媒の開発に成功。さらに燃焼反応機構も明らかにした。
新規触媒は、ムライト型結晶構造体に酸化銅を担持している(CuOx/3A2S)。この新規触媒を使用してアンモニアを燃焼させたところ、高活性かつ窒素酸化物を排出しないよう窒素を選択的に生成でき、触媒自体は高温下でも変質しないことが分かった。
市販されている一般的な材料を利用でき、酸化銅も工業的にも広く用いられている「湿式含浸法」によって担持できるため、簡易かつ低コストで製造可能という。この触媒を活用することでアンモニアの燃料としての利用や、その熱を利用した水素製造など、活用の幅を広げられるとしており、今後はより実用に近い条件で研究開発を行う計画だ。
関連記事
- リチウムを超える「アルミニウム」、トヨタの工夫とは
電気自動車に必要不可欠なリチウムイオン蓄電池。だが、より電池の性能を高めようとしても限界が近い。そこで、実質的なエネルギー量がガソリンに近い金属空気電池に期待がかかっている。トヨタ自動車の研究者が発表したアルミニウム空気電池の研究内容を紹介する。開発ポイントは、不純物の多い安価なアルミニウムを使うことだ。 - 再エネでアンモニアを合成、“欲しいときに欲しいだけ”
早稲田大学と日本触媒は、電場印加した触媒上で低温かつ世界最高級の速度でアンモニアを合成できることを明らかにした。再エネの電力を使用する水電解技術を併用することで、オンデマンドで1日に数10〜100トン規模のアンモニア合成プラントの実現が期待できるという。 - 純度99.999%の水素をアンモニアから、低コストな新製造方式を確立
岐阜大学と澤藤電機はアンモニアから高純度の水素を製造できるシステムを開発した。プラズマを利用して製造するのが特徴で、貴金属を利用する必要がなく、低コストな水素製造が可能だという。水素エネルギーの普及課題の1つが「貯留や輸送の低コスト化」だ。この課題の解決策として注目されている「アンモニアの水素キャリアとしての利用」を実現するシステムとして、期待が掛かる。 - 水素を大量に作れる新材料、再エネ水素製造の低コスト化に貢献
産業技術総合研究所の研究グループは水の電気分解で、従来より水素を大量に製造できる酸化物ナノ複合化陽極材料を開発したと発表した。水素ステーション用の水素製造装置の小型化や、再生可能エネルギーを用いた水素製造の低コスト化につながる成果だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.