発電事業者に系統費用の負担を義務化、再エネ電源も対象に:エネルギー管理(2/2 ページ)
政府は送配電網の利用料である託送料金に関する制度を、2020年をめどに刷新する。現在、託送料金は小売電気事業者が負担しているが、再生エネルギーを含めた発電事業者にも負担を義務付ける方針だ。
発電所の立地によって託送料金を割引き
送配電網の“利用効率を高める”もう1つの手法として、電源の立地条件に応じて発電側基本料金を割り引く、インセンティブ制度を設ける方針だ。発電所の立地が大都市などの需要地に近い場合には送配電網の整備コストは小さくて済むが、遠い場合にはコストが大きくなる。しかし、現状のルールにおいて発電事業者はこうした立地によるコスト変動を考慮せずに事業地を選定できる。そこで、電源の立地場所が送配電網の追加投資に与える影響に応じて負担額を変える仕組みとすることで、効率的に設備を利用できる場所に電源を誘導していくという狙いだ。
現在も、電源の立地エリアに応じた需要側の託送料金の割引制度として、「需要地近接性評価割引制度」という制度が設けられている。しかし、卸電力取引市場への販売や一般送配電事業者のエリアを越えた取り引きなど、発電と小売りが関係しない取り引きには適用されないため、全ての電源に対する有効なインセンティブとはなっていない。
新たに設ける割引制度は、「基幹系統」と「特別高圧系統」それぞれに対し、将来的な投資を効率化し、送電ロスを削減する効果のある電源に対し、発電側基本料金を割り引く。
基幹系統については、各供給エリア内で、基幹変電所・開閉所単位で見て、相対的に限界送電費用が小さい地域に立地する全ての電源について、基幹系統の一部固定費の費用負担を軽減する。限界送電費用は、「基幹系統の投資効率化効果」と「送電ロスの削減効果」の2軸で評価を行う。割引対象地域は、基幹変電所・開閉所単位で見た限界送電費用が、供給エリア内の平均値を下回るエリアとする。
割引単価(kW当たり)は、発電側基本料金との整合性を図るため、基幹系統の減価償却費および事業報酬のうち、発電側基本料金で回収する金額を発電側の課金対象kWで割った金額を、kW当たりの割引単価の最大値にする。
一方、特別高圧系統に関しては、割引対象地域を「基幹系統投資効率化・送電ロス削減割引の対象地域であること」「『重負荷断面』や『最過酷断面』などの代表的な断面において、特別高圧系統に対して逆潮流していないこと」「空き容量マップにおいて、空き容量がゼロより大きいこと」の3つの条件に基づいて選定する。割引単価は基幹系統と同様の方法で算出する。
なお、基幹系統と特別高圧系統ともに、割引対象地域については5年ごとの見直しを基本とする。そして、この制度の導入に伴い、現行の需要地近接性評価割引制度は廃止する方針だ。
関連記事
- 改正FITで転機となった太陽光発電、今後求められる視点は何か
適正な事業計画の策定、定期点検の義務化など、2017年の太陽光発電市場は改正FIT法の施行で大きな転機を迎えた。本稿では改正FIT法によって変わったポイントを振り返るとともに、今後の太陽光発電事業に求められる視点や技術を解説する。 - これからの太陽光発電、「デューデリジェンス」が事業の明暗を分ける
2017年4月から施行された改正FIT法。長期的な事業計画の策定や適切な運用保守が求めるようになるなど、太陽光発電事業を取り巻く環境は大きく変化した。こうした中で、今後の太陽光発電事業を成功させるためるには、どういった点に注意する必要があるのか。横浜環境デザインが解説する。 - 再エネは主力電源、原子力は「脱炭素化の選択肢」――日本の長期エネルギー戦略
経済産業省は日本の2050年までの長期エネルギー戦略に対する提言をまとめた。脱炭素化の方針を掲げるが、実現に向けたシナリオは一本化せず“複線”とし、総花的な内容となっている。 - 急増する太陽光発電の「雑草トラブル」、知っておきたいリスクと対策
日本でも稼働から数年が経過する太陽光発電所が増える中、課題の1つとなっているのが雑草対策だ。太陽光発電の雑草対策を手掛ける野原ホールディングスが、知っておくべき雑草に関する基礎知識や対策方法を解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.