再エネで「グリーン水素」、旭化成がドイツで実証開始:自然エネルギー
旭化成がドイツで再生可能エネルギーを活用した水素製造の実証を開始。独自開発のアルカリ水電解システムを活用する。
旭化成の欧州統括会社である旭化成ヨーロッパ(AKEU、ドイツ・デュッセルドルフ)は2018年4月27日、ドイツのヘルテン市にある水素関連技術開発拠点「h2herten」で、風力模擬電源を使ってアルカリ水から「グリーン水素」を生成する実証プロジェクトを開始した。
近年、水素はエネルギー貯蔵の分野だけでなく、自動車の代替燃料としても関心が高まっている。また、ドイツでは2022年までに原子力エネルギーを廃絶するとともに、出力変動が大きい再生可能エネルギーの導入拡大などを目指しているため、信頼性の高い蓄電技術が強く求められているという。
旭化成は、世界26カ国、126カ所の生産拠点で使用されている食塩電解システムのメインサプライヤで、この技術をベースに再生可能エネルギーなどの変動電源の利用に適すというアルカリ水電解システムを開発した。同システムは10MW(メガワット)までの大型化が可能で、単一装置で大量の水素を生産すできるという。
旭化成はその第1弾として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の技術開発支援により、横浜市で10MW級の大型アルカリ水電解システムを想定した長時間の水素製造実証プロジェクトに成功している。
今回のプロジェクトは、欧州で、再生可能エネルギー源から供給される電力を使用して水素を製造する、水素製造プロジェクトの第2弾となる。NRW.INVEST(ドイツNRW州経済振興公社)の協力により、h2hertenと共同で行い、大規模な水素製造向けのアルカリ水電解システムの開発に役立てる狙い。
AKEUは2017年11月14日に、欧州における国際的な31の研究機関と企業とのパートナーシップで行う、CO2の回収・利用および貯蔵に関する「ALIGN-CCUSプロジェクト」に参加することを発表している。同社のアルカリ水電解システムを活用し、製造した水素と火力発電所などから回収したCO2を反応させ、メタノールなど燃料に変換することで、CO2の再利用につなげる。ALIGN-CCUSプロジェクトの実証期間は2017〜2020年までの3年間となっている。
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