EVを電力の需給調整に活用、「仮想発電所」の構築実証がスタート:エネルギー管理
豊田通商と中部電力がバーチャルパワープラントの構築実証に着手。電気自動車の蓄電池を制御し、再生可能エネルギーの出力変動の吸収など、系統安定化に活用する。
豊田通商と中部電力は、経済産業省資源エネルギー庁の補助事業である「平成30年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」のうち「V2Gアグリゲーター事業」に採択され、実証事業を開始した。
バーチャルパワープラント(VPP)技術は、家庭や工場などに点在する太陽光発電などの再生可能エネルギー発電、蓄電池などをネットワークでつなぎ、あたかも1つの発電所のように機能させる仕組み。なかでもV2G(Vehicle to Grid)は、プラグインハイブリッド車(PHV・PHEV)や電気自動車(EV)などの電動車の車載蓄電池を活用し、充電に加えて、蓄電した電力を電力系統に供給(逆潮流)する技術だ。
日射量や風量など、自然条件によって影響を受ける再生可能エネルギーの導入拡大が見込まれている中、自然条件の変化による発電出力の変動が増大したり、発電する時間帯の偏りによって余剰電力が発生したりすることが今後の課題となってきた。V2G技術は、出力変動に対応するための調整力の提供や、余剰電力を充電して供給力が必要な時間帯に放電する供給力シフトを可能とする技術として期待されているという。
同実証事業は、V2Gによる調整力の提供や再生可能エネルギーの供給力シフトの実現可能性を検証するため、複数台の車載蓄電池を束ねて充放電を制御するV2G制御システムを構築し、愛知県豊田市の駐車施設に充放電器を設置し、実証試験を行う。実際に電動車の蓄電池への充電だけではなく、電力系統に逆潮流させることで、電力系統に与える影響を評価し、電動車の需給調整用途活用を目指すものとなっている。また、同実証では、米国のベンチャー企業ヌービー社のV2G技術を活用し、応動時間が短く難易度が高い短周期変動へ対応する調整力(周波数調整力)の提供を目指す。
なお、同実証で、豊田通商は、アグリゲーターとしてV2G制御システム(ヌービー社製のV2Gシステムを利用予定)を構築し、電力系統に対して調整力の提供や、再生可能エネルギー電源の供給力シフトなどを担当。中部電力は、一般送配電事業者の立場からV2Gの電力系統への影響評価を行い、新たな調整力の確保につながる技術の向上への寄与により、安全・安価で安定的な電気の供給を目指す。
実証事業のスケジュールとしてはV2G制御システムの開発を2018年10月頃までに行い、その後、充放電試験結果分析を2019年2月頃までをめどに実施する。
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