住宅の地中熱利用、導入コスト40%削減の新技術:省エネ機器
日本大学らが一般住宅向けの新しい地中熱利用システムを開発。これまでの地中熱利用システムの課題であった高いコストを削減できる、新しい施工法などを開発した。
日本大学は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業で、日商テクノおよび住環境設計室(福島県郡山市)とともに、一般住宅向けの浅層地中熱利用システムの低コスト化技術を開発した。低コスト化を図るため、システムの地中熱交換器で使用する鋼管を回転させながら地中に貫入させていく新たな施工法と、地中熱交換器群と冷暖房用室内機群を連携制御するヒートポンプシステム制御技術を開発。プロジェクトの最終目標である導入コスト40%減と運用コスト10%減を達成できる見込みを確認したという。
日本における再生可能エネルギー利用の一層の拡大に向け、住宅基礎杭(くい)などを活用できる浅層地中熱利用(主に地表から20メートルより浅い土壌中に設置した熱交換器からの熱エネルギーを冷暖房へ利用する方式)は有力な熱エネルギー候補とされてきた。
地中熱利用システムは、地中熱交換器、ヒートポンプ、室内機などで構成されており、地中に埋設させた熱交換器を通じて地中の熱を取り出し、ヒートポンプで冷熱・温熱を作り出して、室内機で冷房・暖房を行う。冬は外気より高い温度の地中熱を熱源に利用できるため効率良く暖房運転が行える。また、夏は外気より低い温度の地中熱を熱源に利用できるため効率良く冷房運転ができる。
しかし、従来のシステムでは熱交換器の埋設孔を深く掘る必要があるため掘削コストが大きく、また地中熱交換器とヒートポンプ、ヒートポンプと室内機の制御が最適化されていないため、運用コストが高いなどが課題だった。このため、既築住宅を含む一般の住宅への普及には従来と比較し大幅なコストダウンが不可欠であり、新たな要素技術およびシステム技術の開発が急務となっていた。
こうした中で3者は、NEDO事業で一般住宅向けの浅層地中熱利用システムの低コスト化技術を開発した。まず、浅層熱利用システムの導入コスト低減に寄与する技術として、地中熱交換器で使用する鋼管を回転させながら地中に貫入させていく回転埋設工法を開発した。同施工法は、埋設機能および熱交換機能を保有する2重管方式熱交換器を利用するため、排出残土もなく、埋設作業と熱交換器設置作業を同時に実施する低コスト型の手法となっている。これを実現するため、深さ20メートル以浅の地中熱利用であることを生かし、幅、奥行き1メートル程度の小型軽量埋設機構を開発するとともに、短い鋼管を順次接続しながら地中に回転埋設するねじ式接続法、周囲土壌を圧密しながら貫入する2重管方式地中熱交換器、鋼管の先端錐(ビット)の設計法を採用している。
運用コスト低減に寄与する技術として、複数の地中熱交換器群と冷暖房室内機群を連携制御するヒートポンプシステム制御技術も開発した。同制御技術により、複数の室内機群の運用に影響される熱負荷に応じた循環ポンプの流量の適正化、および地中熱交換器の稼働率の適正化に成功した。
開発技術の検証では、福島県郡山市の日本大学工学部再生可能エネルギー共同研究施設および福島県葛尾村の実験場において実証設備を構築し、開発技術と従来技術とを同一の環境条件で比較評価した。併せて、既築の戸建住宅へ新たにシステムを導入する場合の初期コストについて、各種設備の実際の調達を念頭に実証的な評価を進めてきた。その結果、初期導入コスト評価では、浅層熱利用の実証システム(地中熱交換器8メートル×13本、5kWのヒートポンプ、冷暖房用室内機2台および配管など)導入の既築住宅を対象とした場合、新施工法により導入コストを40%削減した150万円/5kWの浅層地中熱利用システムを実現できるとの見通しが得られた。さらに、従来の浅層地中熱利用システムと比較した結果、システムの運用コストを10%低減できることも確認した。
今後、同システムの配管系の施工法改良などで引き続きシステムコスト低減を図る。また、同システムの検証試験を継続し、システム構成機器および制御方法の最適化によってさらなるシステム効率向上を図るとともに、商用化を見据えた信頼性検証を行う予定だ。
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