電力需給に応じてエアコンを自動制御、ダイキンが実証へ:エネルギー管理
ダイキン工業がNEDO事業のもと、ポルトガルで開発を進めていた空調自動デマンドレスポンス実証システムが完成。電力需給に応じ、最適にエアコンを自動制御する実証を2018年7月から開始した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とダイキン工業は、ポルトガルのリスボン市で2016年11月から構築を進めてきた空調自動デマンドレスポンス実証システムを完成させ、2018年7月から運転を開始すると発表した。
ポルトガルでは、風力発電や水力発電など再生可能エネルギーの導入を積極的に進めており、欧州でも有数の大量導入国となっている。2017年の実績では、総電力消費量のうち約44%を再生可能エネルギーで賄ったという。2016年4月には、4日間にわたり再生可能エネルギーが国内の全電力需要を満たしたほか、2018年3月には、同国の1カ月分の全電力需要を上回る発電量を記録した。一方で、再生可能エネルギーの発電量は自然環境にも左右されるため、電力需要ピーク時の安定供給が課題だと考えられている。
こうした中で、2016年11月21日にNEDOとポルトガルの国立エネルギー地質研究所(LNEG)は、電力の需給状況に応じて需要を自動創出・抑制する自動デマンドレスポンス(ADR)実証事業開始に向けた基本協定書(MOU)を締結した。同時にNEDOは、リスボン市とリスボン市庁舎などの施設を実証サイトとすることに合意し、施行協定書(IA)を締結するとともに、委託先としてダイキン工業を選定し、実証事業に着手した。
このほどNEDOとダイキン工業は、2016年11月から構築を進めてきた空調自動デマンドレスポンス実証システムを完成させ、2018年7月から運転を開始する。
同実証事業では、業務用ビルなどで電力消費の約4割を占めるといわれるエアコンに着目し、リスボン市庁舎などリスボン市内4カ所の施設にデマンドレスポンス機能および蓄冷機能付きのビル用マルチエアコン(1台の室外機で容量の異なる複数の室内機を個別運転可能な空調機器)を設置し、電力需給調整機能の実証など再生可能エネルギー利用率の最大化に向けた事業モデルの検討を行う。
具体的には、電力の需給状況に応じて、蓄冷機能も活用して空調機器の電力消費量の上限を自動制御し、大量の再生可能エネルギーの導入により必要となる需要の創出・抑制を行い、室内環境も考慮した上で需給調整運転の検証を実施する。そのために、前日の天候や日々のエアコンの使用状況などから当日の電力需要の推移を予測して運転を自動で調節する制御システムを構築し、ADRシステムおよびバーチャルパワープラント(VPP)システムのパートナーからの電力需要の創出・抑制指令に基づき、空調機器の電力消費量の自動制御を通じて電力需給のバランスを調整して、その効果を検証する。
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