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「電力会社の競合はAmazonやAppleになる」、異色の東電ベンチャーが描く電力ビジネスの未来(3/3 ページ)

東電グループのベンチャー企業で、住宅の太陽光発電の電力を売買できる「P2P取引プラットフォーム」の実現を目指すTRENDE。フィンテック業界から転身し、同社の代表取締役に就いた妹尾氏にその事業戦略とビジョンを聞いた。

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集中から分散へ、金融とエネルギー業界の類似点

――金融業界からエネルギー業界へ転身し、TRENDEの設立に至った経緯を教えてください。

妹尾氏 私は1997年に社会人になってから、20年ほど金融畑で過ごしてきました。2007年までの10年間は東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に努め、その後、日本で初めてソーシャルレンディング事業を手掛けるmaneoを創業しました。その後、2013年にブロックチェーン開発ベンチャーOrbを創業して、現在に至ります。

 こう見ると、TRENDE、エネルギー業界への転身というのは全く脈略が無く見えるのですが、私の中では「ヒエラルキーのある業界が分散化に向かう」という点でつながっています。

 ソーシャルレンディング事業を行っているmaneoは、金融という観点でもっと中小企業や個人の役に立つ金融サービスを提供したいという想いで創業しました。でも7年ほどmaneoをやって、ふと「自分は金融商売をやっているけど、現金に触ったことがない」と気付いたんです。そう思っていた矢先に、仮想通貨の「ビットコイン」と出会って、面白いと思った。さらに仮想通貨の背景を探っていくと、そこにはブロックチェーンという技術がある。こうした技術を活用すれば、日本銀行一極集中の金融ビジネスを市場化できるのではないか――という可能性を感じ、Orbを創業しました。

 その後、2017年2月にウィーンで開かれた「Event Horizon」に参加したんです。これは、グリッドシンギュラリティという欧州のブロックチェーン事業を手掛けるベンチャーが主催するイベントです。そこで、まだ概念実証(PoC)のレベルではありますが、実際にブロックチェーンを活用して電力取引を行っている事例を見て、大きな感銘を受けたんです。

 私がこれまでいた金融業界とエネルギー業界は、業界構造の点で類似する点が多い。金融業界は日銀を頂点とした強固なヒエラルキーがありました。でも、それが仮想通貨やブロックチェーンの登場によって、業界の構造が逆転するような、大きなゲームチェンジが起きはじめた。低金利による低収益に悩むメガバンクが、こうしたテクノロジーの登場に危機感を感じはじめたんです。金融庁の規制緩和もあり、今ではメガバンクもフィンテック事業を推進していますよね。さらに業界内に多くのベンチャーが登場し、これまでになかった市場競争が生まれはじめています。

 エネルギー業界もこれまでは非常に中央集権的な構造だったと思います。しかし、電力の自由化によって新たな市場競争がはじまっている。その中でブロックチェーンを活用し、P2Pなど非中央集権型のエネルギー供給の仕組みを作っていくというのは、非常に面白いのではないかと感じたんです。

 技術が成熟し、当局が競争を促すようになれば、金融業界で起きたゲームチェンジが、必ずエネルギー業界でも起こるのではないかと感じています。

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