排水から回収したバイオガスを再利用、大王製紙が建設:自然エネルギー
大王製紙はクラフトパルプ製造工程で発生する排水からバイオガスを取り出す設備を自社工場に導入する。このバイオガスを重油の代替燃料として利用することで、年間約1万5000トンのCO2排出量削減効果を見込む。
大王製紙は2018年9月、クラフトパルプ製造工程で発生する排水からバイオガスを取り出す設備を三島工場(愛媛県四国中央市)に設置すると発表した。総工費は約19億円で、2020年10月から稼働する計画だ。
この設備は、住友重機械エンバイロメント(東京都品川区)の嫌気性処理システム(バイオインパクト)の技術を利用したもので、国内最大級の嫌気処理設備となる予定だという。
同設備で取り出したバイオガスは、三島工場内にあるクラフトパルプ製造工程で使用する石灰を焼成して再利用する設備である、石灰焼成キルンで使用する重油の代替燃料として有効利用する。これにより、年間約1万5000トンのCO2排出量削減、排水負荷低減などの環境負荷低減効果、および年間に重油削減量約5000kl(キロリットル)の操業コスト低減効果などが期待されている。
三島工場では、これまでクラフトパルプ製造工程で木材から繊維を取り出した時に発生するパルプ廃液(黒液)を黒液回収ボイラーで燃焼し、エネルギーを回収するバイオマス発電を行ってきた。その黒液に加えて今回の事業は、メタン成分を含んだクラフトパルプ排水からメタンガスを取り出すことにより、さらなる再生可能エネルギーの有効利用を図る。
同事業は再生可能エネルギー活用の先導事例として、経済産業省の「平成30年度再生可能エネルギー熱事業者支援事業補助事業」に採択されている。また、愛媛県のバイオマス活用推進計画における推進事業の一つとして認定されており、官民一体で事業を進める。
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