太陽光発電の“長期未稼働案件”、FIT価格を引き下げる方針に:太陽光
資源エネルギー庁は、FIT初期に認定を取得した太陽光発電の長期未稼働案件に対し、買取価格の減額などを行う方針を示した。
経済産業省 資源エネルギー庁は2018年10月15日、「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」を開催した。その中で、10kW(キロワット)以上の事業用太陽光発電の長期未稼働案件について、新たな運転期限を設定すると同時に、一定条件のもとで「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」による買取価格の減額を行う方針を示した。
買取価格の減額対象とするのは、2012〜2014年度にFIT認定を受けた案件で、なおかつ改正FIT法への移行時に運転開始期限を設定していないもの。加えて、「運転開始準備期間に入った時点」を基準とし、条件を満たす場合は、そこから2年前の買取価格を適用する。
ポイントとなるのが「運転開始準備期間に入った時点」の定義だ。これは「送配電事業者が、発電事業者から系統連系工事の着工申し込みを受領した日」と定義している。
買取価格が減額となるのは、この受領日が2019年3月末を超えた場合、つまり、2018年度内に受領してもらうことができなかった場合だ。受領日を基準に、そこから2年前の買取価格が適用される。2012年の40円、2013年の36円、2014年の32円の買取価格は、受領日が2019年度中の場合は21円に、2020年度中になった場合は18円になる。同時に、受領日から1年の運転開始期限が設定される点もポイントだ。
2018年度内に統連系工事の着工申し込みが受領されれば、既存の買取価格は維持される。ただし、2019年4月から1年間の運転開始期限が設定される。なお、運転開始期限に間に合わなかった場合の措置については今後議論されるが、改正FIT法と同様に、超過した期間だけ買取期間を短縮するといったペナルティになる見込みが高い。
今回の減額措置において、大きなポイントなのが系統連系工事の着工申し込みの「受領日」だ。電力会社が受領するかどうかは、「送配電事業者が系統側の都合(系統増強に要する期間、系統連系工事の混雑具合など)のみに基づき、最短の連系開始予定日を決定できるか否か」が基準になるという。つまり、発電事業者側には申し込み時点で「後は送配電事業者に発電設備を系統に接続してもらい通電するだけの状態」まで、準備を整えることが求められる。
資源エネルギー庁では今後、パブリックコメントを募集して細部を詰めた後、省令改正を行うとともに、正式な措置の内容やスケジュールなどを公表する予定だ。
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