風力発電の導入拡大へ、北海道に「送電線+大型蓄電池」を新設:自然エネルギー
北海道北部で風力発電の導入拡大を目的とした、送電線の新設プロジェクトが始動。新たに設置する変電所には大型の蓄電システムを導入し、出力変動対策に活用する。
GSユアサは、北海道北部風力送電(札幌市)が計画する「風力発電のための送電網整備の実証事業」において、EPC(設計・調達・施工)を担当する千代田化工建設から、大容量蓄電池設備設置工事を受注したと発表した。
北海道北部風力送電が進める「風力発電のための送電網整備の実証事業」は、風力発電の導入拡大に向け、系統制約の解消と安定的な電力供給を目指すプロジェクト。系統を増強するために、稚内恵北開閉所・開源開閉所から、新設する「北富豊変電所」(北海道豊富町)を経由し、北海道電力の設備までの77.8kmに域内送電網を整備する計画。運転開始は2023年3月を予定している。総事業費は1000億円で、2018年10月4日から建設工事を開始した。
送電線は2回線を敷設する。北富豊変電所から北海道設備間の70.2km(キロメートル)に187kV(キロボルト)、稚内恵北・開源開閉所から北富豊変電所間の7.6kmに66kVの送電線を敷く。これにより、約600MW(メガワット)の風力発電を連係できるという。
新設する北豊富変電所は、2022年度に稼働を予定している。今回、GSユアサが同変電所に出力240MW(メガワット)、容量720MWh(メガワット時)の蓄電池設備を設置する。変電所に併設する蓄電池システムとしては世界最大級という。この大容量の蓄電池で風力発電の出力変動を吸収し、系統安定化を図る狙い。
今回納入するリチウムイオン電池は、高い信頼性を持つ内部抵抗の小さい高エネルギータイプの新型リチウムイオン電池を採用。出力変動の吸収運転に重要な最適SOC(State of Charge、充電率)管理が可能などの特徴があるという。リチウムイオン電池セルは、車載用および産業用蓄電池事業を手掛けるGSユアサグループのリチウムエナジージャパンで製造する。
関連記事
- 神話を破壊、111%の電力生むデンマークの風力
風力発電など、再生可能エネルギーに由来する発電所をこれ以上増やすことが難しいという議論がある。系統が不安定化したり、火力発電所の増設が必要になったりするという理由だ。このような主張は正しいのだろうか。風力だけで消費電力の100%以上をまかなったデンマークの事例を紹介する。 - 翼が円柱、新原理で中小型風車を革新
風車の翼の形は飛行機に似た形状を採る。このような常識を覆す風車「円柱翼風車」が登場した。開発したのは長岡技術科学大学の教授を務める高橋勉氏。中小型風車に向くという。特徴や用途を解説する。 - 風力発電の稼働率アップを実現、AIが故障を予知する新技術
NEDO、東京大学、産総研がAIを活用した風車の故障予知技術を開発。風力発電の設備利用率を2%高めることに成功したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.