東電の支援でニチガスも電力販売へ、東京ガスへの対抗鮮明に:電力供給サービス
ガス販売大手の日本瓦斯(ニチガス)が電力小売事業への参入を発表。東京電力エナジーパートナーの支援を受け、電力とガスを組み合わせた料金プランを展開する。関東圏において“東電・ニチガス連合”の大きなライバルである東京ガスのプランより割安な料金設定をアピールした。
ガス販売大手の日本瓦斯(以下、ニチガス)は2018年11月12日、電力小売事業への参入を表明した。これまで展開してきた都市ガスもしくはLPガスと、電気を組み合わせた新しいセット料金プランで、2018年度中に5万件、2019年度中に20万件の新規顧客獲得を目指す。既にニチガスの都市ガスもしくはLPガスを契約しているユーザーは同年11月12日から、完全新規の顧客は同年12月から申し込みを受け付ける。
ニチガス同日に開いた記者会見の様子。左からイメージキャラクターのスルーノ三世、同社 執行役員 松田祐毅氏、ニチガスの新CMに出演する本田翼さんと出川哲朗さん、同社 代表取締役専務 柏谷邦彦氏、同社 常務取締役 鈴木紀臣氏
ニチガスは関東郊外を中心にガス販売を手掛けていたが、都市ガス自由化を機に東京電力エナジーパートナー(東電EP)と提携し、東京ガス管内での都市ガス販売を開始。現在LPガスで約84万件、都市ガスで約56万件の顧客基盤を持つ。ただ、電気については提携先の東電EPのプランのみを販売しており、自社独自のプランは展開していなかった。
新たに展開するセット料金プランの名称は「でガ割」。電気料金は契約アンペア数に応じた基本料金と、200kWh(キロワット時)までの使用料金を一律4600円に設定。その後は使用量に応じた段階料金で、1kWh当たりの単価を201〜350kWhまでは23.50円、351kWh以降は25.50円とし、月に200kWh以上電力を利用するユーザーにメリットが出やすくした。
ガスについては東京ガス管内の場合、立方メートル(m3)当たりのガス単価を通常料金より5%割りとする。さらにこの電力とガスを合わせた料金から、1契約当たり月々300円を割り引く。この他、契約者には電気機器のトラブル時に、東京電力パワーグリッドの駆け付けるサポートサービスも提供する。
3人暮らしを想定した家庭で、契約容量40A、月の電力使用量400kWh、ガス使用量42m3の場合、デガ割の料金は月額1万6390円となる。これは電気を東電EPの従量電灯B、ガスを東京ガスの一般料金で契約する場合より約6.7%、東京ガスの電気とガスのセットプランより2.1%安いという。
電力小売事業への参入にあたっては、組織の立ち上げなどの面で、東電EPの全面的な支援を受けたという。ただ、販売する電力については、「東京電力に限定らず、幅広く調達を行っていく方針」(ニチガス 常務取締役 鈴木紀臣氏)としている。
また、でガ割の提供に合わせて、毎月の電気とガスの利用明細、支払履歴などの情報を確認できるスマートフォンアプリ「マイニチガス」もリリースする。「これまでのニチガスは顧客との接点を対面でしか持っていなかったが、マイニチガスは新しい第二の顧客接点となるもの。あたかもニチガスの担当者が目の前にいるようなイメージ」(ニチガス 執行役員 松田祐毅氏)と位置づけ、今後は電気料金の確認などだけでなく、他社とのサービス連携なども視野に開発に注力していく方針だ。
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