ソーラーシェアリング事業の壁、「ファイナンス」の手法について考える:ソーラーシェアリング入門(6)(2/2 ページ)
太陽光発電と農業を両立する手法として、近年、国内で大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングの事業化に際して課題になることが多い「ファイナンス」の手法について解説する。
新たなファイナンス手法が出てくる可能性も
現在は、10年以内の一時転用許可を得ることも可能になりましたから、その場合だと融資期間中の更新は1回だけという形になり、許可更新を繰り返すリスクが低減されることで以前よりも金融機関による融資へのハードルは下がってきた印象があります。
また、10年許可の条件には「担い手」による営農のように、ソーラーシェアリングにおける農業の安定した実施を担保できる可能性が高い事項が含まれており、この場合には先に述べた営農の適切な継続が可能かどうかを評価する能力が金融機関側に備われば、融資を得ることは更に容易になってくるでしょう。
ソーラーシェアリングの普及当初に、日本政策金融公庫が融資を実行できた背景には、公庫の農林水産事業の存在があると言います。農業融資のノウハウを蓄積していたからこそ、農業と密接に関連するソーラーシェアリングへの融資にも踏み切れたという話は、実際に融資を受けた方々からよく耳にします。
農地に関する登記について少し触れておくと、ソーラーシェアリングで発電事業者が農地を借りて事業を行う場合、一時転用許可に際して得られるのは支柱部分の賃借に関する許可と空中部分への区分地上権設定許可です。区分地上権は地上権の一種ですから、これに対して金融機関などが抵当権を設定することは可能です。しかし、支柱部分の賃借については農地1筆の一部に対する許可でしかないため、一般的に地上設置型の太陽光発電で行われるような賃借権の登記が出来ません。従って、金融機関も農地そのものの賃借に関する抵当権設定ができないため、融資のハードルの一つとなってきたのです。
先に取り上げた匝瑳メガソーラーシェアリングが完成した頃から、高圧〜特別高圧規模のソーラーシェアリングプロジェクトが全国各地で増え始め、ファイナンスの手法も以前より多様化してきています。地域で大規模な発電事業を行うために、発電事業者と営農者が役割分担をするスキームでも、長期にわたる農業と発電事業の双方を効果的にリンクさせることで、ソーラーシェアリングプロジェクト自体の安定性を確保し、金融機関による融資を得られるモデル作りを進めています。地上設置型の太陽光発電でもそうでしたが、これからソーラーシェアリングも事例が増えていく中で、農業との関係性などに着目した新たなファイナンス手法が出てくる可能性もあるのではと考えています。
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