水素も供給できるバイオマス発電所、未利用材で2500世帯分を発電:自然エネルギー
トーヨーグループが石川県輪島市で建設を進めていたバイオマス発電所が完成。未利用の間伐材などで発電し、将来は水素ガスの供給も可能だという。
輪島バイオマス発電所(石川県輪島市)、トーヨー建設(東京都葛飾区)、トーヨーエネルギーソリューション(東京都千代田区)のトーヨーホールディングスグループ3社が石川県輪島市で建設を進めていた「輪島バイオマス発電所」がこのほど完成し、2018年11月12日に火入れ式が開催された。
「能登の里山里海」が世界農業遺産に認定されている石川県は、総面積の69%が森林で、その多くは50〜60年前に植林され、現在利用に適した成熟期を迎えているという。しかし、森林維持には欠かせない間伐などで生じた木材のうち、利用されているのは70%程度で、こうした背景から、同グループは間伐などの未利用材を有効活用する同発電所の建設を決めた。
同発電所で必要となる原木は年間約2万2000トン(日量66トン、335日稼働)で、全てを近隣地域の未利用材だけで賄うことができるという。輪島バイオマス発電所の出力は1994kW(キロワット)で、一般家庭の約2500世帯分に相当する年間約1万6000MWh(メガワット時)の発電量を見込む。売電単価は40円/kWh。
発電所の隣には、林野庁の補助金を活用して原料となる間伐材から木質チップを生産するチップ工場を建設し、既に生産・販売を行っている。なお、石川県森林組合連合会とは原木の供給協定を結んでいる。
同発電所の技術は、ヨーロッパにて長期稼働実績のある高効率のガス化発電技術に基づき、新たに開発したトーヨーエネルギーソリューションのオリジナル技術で、高温で無酸素の炉に木質チップを投入し、高温の水蒸気でガスを改質してエンジン発電機に送り発電する。また、水蒸気で改質することで改質ガス中のタールを大幅に少なくする特徴があり、クリーンなガスで安定稼働が可能という。
地域へエネルギーの供給だけでなく、将来的には水素ガスを精製することも可能だ。さらに同グループでは林業分野での若い担い手不足を解決するため指導者を採用し、伐採事業を行う体制を整備した。同発電所はその第1号となり、能登地域での伐採も直接行う。石川県では熱供給も実施する第2号発電所の計画や福島県等全国でも木質バイオマス発電所の計画も進めており、引き続き林業人材の育成や木質資源の地域循環および地域の活性化に取り組む。
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