FIT価格“10円時代”でも、ソーラーシェアリングは持続可能なのか?:ソーラーシェアリング入門(8)(2/2 ページ)
農業の新しい収益源として注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」について解説する本連載。今回はFITの買取価格が10円台に突入する中で、持続的なソーラーシェアリング事業を実現するための手法について解説する。
設備下で行われる農業への配慮は「追加コスト」ではない
また、ソーラーシェアリングの場合、農地を転用する故に土地の取得や賃借のコストは一般的な太陽光発電事業より低いというメリットもあります。O&M(運用保守)の面でも、地上設置型の発電所オーナーを悩ませる除草作業が不要です。さらに、これまでの発電量データから、地上設置型に比べてソーラーシェアリングの方が発電量は高くなると言うことも分かってきています。一方で、高所に設置されたモジュールの検査方法の確立や、農業の暦(こよみ)に合わせたメンテナンススケジュールの立案といったアグリマネジメントの実施など、これから考えていくべき運用面の課題もあります。
こういった課題の克服を図りつつ、地上設置型の導入が一巡したとも言われる中で、徐々にコスト優位を確立していくソーラーシェアリングが、今後の太陽光発電導入の主要なフィールドとなっていくことは、疑いがないところです。
重要なのは“脱FIT思考”
そしてもう一つ、ソーラーシェアリングに限らず自然エネルギー発電事業全般に言えることですが、FITという補助輪によって凝り固まってしまった思考からの脱却が必要です。これは、発電事業を20年という期間だけで考えてしまうという「病」ですが、それを乗り越えることでFITに依存しない事業へのステップアップが可能になります。
FITによって大量導入された太陽光発電設備への大きな懸念の一つが、FIT終了後も引き続き社会インフラとして、電力供給の責任を負い続けられるかどうかです。特に高FITの案件ほど、将来的な7〜8円/kWhやそれ以下の単価では、事業性が成立しないような立地・事業条件になっている場合があります。しかし、FITという補助輪をつけてスタートした事業は、いずれその補助輪がなくても安定して自走するインフラ事業になっていくことが前提です。市場が成熟して新設でも安価な電源となることはもちろんですが、FITによって導入された設備も、FIT終了後は投資回収の完了した低コスト電源として使われ続けていかなければなりません。
そのためには、FITの20年という時間軸ではなく、30年や40年以上のスパンで設備の修繕・改修まで含めた事業として考え、収益性も超長期で捉えていく思考への転換が必要です。特にソーラーシェアリングの場合は、農業との共存という事業の大前提があり、それこそ20年経過後に農業も終わってしまい耕作放棄地となるようなことがあってはなりません。農業は1000年、2000年と連綿と続けられてきた人類の営みであり、同じようにとても長い時間軸で取り組むものとも言えるでしょう。
この設備導入とランニングコストの低減、そして太陽光発電の主力電源化という流れの中で、超長期の事業として収益を含めた取り組みとなっていけば、将来の電源としての自立化達成が見えてきます。言い換えれば、その視点に至ることが出来るプレイヤーだけが、これからのソーラーシェアリングの市場において存在感を発揮できるのです。
農業という人類社会に欠かすことの出来ない営みと共存するソーラーシェアリングは、自然エネルギーのあるべき姿を体現しながら、主力電源化へ道を示していくことが“FIT10円時代”の在り方になっていくでしょう。
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