住宅太陽光の火災事故報告、JPEAとJEMAが見解を表明:太陽光(2/2 ページ)
太陽光発電協会(JPEA)と日本電機工業会(JEMA)は、消費者庁が公表した「住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等」に関する調査報告書を受け、報道関係者への説明会を共同開催。報告書に対する声明と見解を公表した。
太陽電池モジュールの発火原因に対する見解も表明
火災事故の再発防止に向けては、原因の究明が何よりも重要となる。消費者庁の調査報告書では、屋根上の発火箇所は太陽電池モジュールとケーブルの2つに分けられた。このうち、ケーブルの発火原因は施工不良によるものが多く、太陽電池モジュールについては製品そのものの不具合によるところが大きいとされた。JPEAでは、太陽電池モジュールの発火についてさらに検討を加え、次のように整理した。
1.配線接続部の不具合
- 調査報告書
配線接続部の高抵抗化は、経年劣化や製造上の問題(製造時にはんだ強度が十分ではなかったなど)により発生すると考えられる。
- JPEAの見解
一般的な太陽電池モジュールには、下記3つの配線接続がある。「1.太陽電池セルと配線材との接続部」「2.回路を作るための配線材同士の接続部」「3.出力を取り出す端子ボックス内の接続部」。
それぞれ製造段階において、高抵抗部分が生じないように万全の管理のもとに作られている。しかし、消費者庁の調査報告書にも記載されている通り、製造上の問題に加えて経年変化が重なり、はんだ接続部に高抵抗部分が生じた場合、発熱につながる可能性がある。
2.バイパス回路部の不具合
- 調査報告書
配線接続部の高抵抗化が進行した場合、安全保護回路であるバイパス回路が常時通電状態で長期間継続し、その耐久性能を超えて断線に至り、安全保護回路としての機能を失った状態になる。
- JPEAの見解
バイパス回路の本来の機能は、モジュール上に影がかかった場合などに、電流をバイパスさせることで、発電量の低下を最小化するとともに、影がかかった部分の発熱を防ぐもの。はんだ接続部などに高抵抗部分が生じた場合においても、条件によって、電流をバイパスさせるが、それが本来の機能ではない。
バイパスダイオードの満たすべき性能は、国際規格(IEC規格)に規定されており、その規定に基づく設計性能が担保されている。バイパス回路が断線故障して、その状態でセルに影がかかるとセルの温度は高くなるが、直接火災と結びつくものではない。
3.高抵抗化〜モジュールの発火
- 調査報告書
バイパス回路が断線すると、不具合によって高抵抗化した配線接続部に再び通電が始まる。これにより、さらに高抵抗化が進行して異常発熱またはアーク放電が発生し、配線接続部を覆っている封止材が発火する可能性が考えられる。
- JPEAの見解
はんだ接続部の高抵抗部の発生により、バイパス回路が断線に至り、高抵抗部分に電流が強制的に流れることは、当該部分での異常発熱につながる可能性がある。しかし、メーカーによる実験結果などから、異常発熱が発火にまで至ることはほとんどないと考えられる。
JPEAとJEMAはこうした認識を共有し、火災原因の究明と再発防止に向けて、継続的な取り組みを進めていく方針だ。その成果は、「保守点検ガイドライン」などの見直しにも生かされてくるものと思われる。太陽光発電システムの安全性は、さらに強化されることになるだろう。
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