ミドリムシ燃料の生産効率化に貢献、生産時の「臭い」の原因を解明:自然エネルギー
ユーグレナなどの研究チームが、ミドリムシを利用したバイオ燃料生産時における「臭い」の原因を解明。ミドリムシの産生する油脂を利用したバイオ燃料の生産効率化に貢献する成果だという。
ユーグレナ、理化学研究所、筑波大学の研究チームは2019年1月、バイオ燃料の原料として注目される「ミドリムシ(ユーグレナ)」について、油脂生産時における硫黄化合物の代謝変化の実態を明らかにしたと発表した。ミドリムシの産生する油脂を利用したバイオ燃料の生産効率化に貢献する成果だという。
ミドリムシ(ユーグレナ)は微細藻類の一種で、淡水の湖沼、田んぼなどに生息する単細胞生物だ。豊富な栄養素を含むことと同時に、周囲に酸素がない条件で、細胞内に蓄積したパラミロンを分解してエネルギーを獲得し、その反応における不要なものをワックスエステルという油脂の形で蓄積する。この現象はミドリムシ独特の発酵として、「ワックスエステル発酵」と名付けられており、ミドリムシのワックスエステルはバイオ燃料の原料として適しているとされることから、技術開発が進められている。一方、バイオ燃料生産に応用する際、油脂を生産するプロセスにおける硫黄化合物系の臭気の発生が課題となっている。
今回、研究グループはこの臭気の原因が、ワックスエステル発酵に伴う硫黄化合物によるものであることをつきとめた。さらにその発生原因がミドリムシ細胞内のタンパク質、およびグルタチオンの分解に由来することを明らかにした。
これを知ることにより油脂生産における臭いの発生を抑制する技術の開発が可能になるとしている。さらに、大規模にバイオ燃料を生産する際に、臭気の放出を予防するとともに、残渣(ざんさ)に含まれるタンパク質を増やし、飼料などへの利用価値を高めることに役立つとしている。この他、ワックスエステル発酵において油脂の生産性を上げるための方策を検討することが可能となり、高効率バイオ燃料の研究を加速させることに役立つことが期待される。
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