“見えない太陽電池”に期待、赤外光を電気に換える新材料:蓄電・発電機器
京都大学らの共同研究グループが、赤外光を電気や信号に変換できる無色透明な材料を開発。目に見えない太陽電池、通信機器、光学センサーなどの最先端デバイスの開発への応用が期待できるという。
京都大学、豊田工業大学、徳島大学、産業技術総合研究所(産総研)らの研究グループは2019年2月13日、赤外光を電気や信号に変換可能な無色透明材料を開発したと発表した。目に見えない太陽電池や通信機器、センサーなどへの応用が期待できる成果だという。
無色透明な材料における光誘起電子移動の実現は、目に見えない通信デバイスやセンサー、太陽電池などを実現するキーテクノロジーとして注目を集めている。そのためには波長の短い、紫外光の活用が鍵とされている。紫外光は通信、太陽光のエネルギー変換に向いておらず、効率が期待できない。そこで、長波長で不可視の光である赤外光を、電気エネルギーや信号に変換することのできる新しい材料の実現が求められている。
そこで研究グループは今回、赤外域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)を示す無機ナノ粒子を用いた。赤外域にLSPRを持ち、ドーピング量を制御することで吸収波長を制御できるスズドープ酸化インジウムナノ粒子を光捕集材、酸化スズを電子アクセプターとして利用することで、赤外光による電子移動と透明性の両立を目指した。
その結果、可視域の透過率95%以上の透明性と、電荷注入効率33%と高い赤外光誘起電子移動効率の両立に成功。さらにこの材料は1400〜4000nm(ナノメートル)という、いわゆる近赤外域から中赤外域の光に応答することも明らかにした。
研究グループは今回の成果について、景観やデザイン性を損なわず社会のあらゆるところに設置できる通信システムや、透明なセンサー、エネルギー供給デバイスを実現するキーテクノロジーの実現に貢献する成果としており、今後は電荷注入効率のさらなる性能向上とともに、透明な電子デバイスへの応用を目指し、材料開発を進める方針だ。
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