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ソーラーシェアリング関係者は必見! 農水省の最新資料とデータを読み解くソーラーシェアリング入門(12)(2/2 ページ)

農業の新しい収益源として注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」について解説する本連載。今回は農林水産省が公開した最新の資料・データを読み解きながら、近年のソーラーシェアリングの動向と今後の見通しについて解説します。

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新規の許可件数は減少、改正FIT法が影響か

 農林水産省がソーラーシェアリングの実施に向けた農地の一時転用許可件数をまとめている「営農型発電設備の設置に係る許可実績について」も、2018年3月末時点のデータにアップデートされました。これをみると全国の合計許可件数は1905件となっていますが、再許可が394件含まれているため、実際には1511件となります。私が各所で述べてきた「一時転用の許可件数は、全国でおおむね1500件程度」という数字が、ほぼ当たっていてホッとしています。

 一方で単年度でみると、2017年度の新規許可件数は327件となり、これは2016年度に比べて84件の減少となっています。この正確な理由は不明ですが、2017年度は経済産業省・資源エネルギー庁による「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」の改正、いわゆる改正FIT法の施行に伴う混乱があったため、その影響が大きいと考えられます。改正FIT法では、設備認定から事業計画認定への制度移行に伴う「みなし認定」手続きが稼働済みも含めたほぼ全ての案件に適用されました。それにより事務作業の大幅な遅延によって移行手続き完了までに半年〜1年を要することもめずらしくありませんでした。未稼働の案件の場合はこの手続きを終えた上で、必要に応じて設備の変更や名義変更を行うことになるため、事業着手はさらに遅れることとなります。

 ソーラーシェアリングのための一時転用許可では、FITを前提とすれば事業計画認定の内容と提出する設備設計や事業者が一致している必要があり、このみなし認定手続きの遅延によって多くの案件で事業実施を遅らさざるを得なかったのではと推測されます。実際、私が自社で進めていたソーラーシェアリング案件も、この影響を大きく受けました。

 ただ、2018年度(平成30年度)以降については、この混乱も収まり、周囲で耳にするソーラーシェアリングの導入計画や取り組み意欲の高まりから、大きく導入量が増加すると予想しています。ですから、今回の農林水産省発表のデータで落ち込みがあったとしても、それはソーラーシェアリングの普及が足踏みしているということにはならないと見ています。

優れた取り組みの周知と水平展開が不可欠

 千葉大学との調査結果でも明らかになったように、ソーラーシェアリング自体の認知度は各市町村農業委員会でも高まってきている一方で「本当に農業が出来るのか」「農地に太陽光発電の設置は不要」といった意見も多く見られます。その背景として、そもそも適切な営農が行われていなかったり、地域振興に寄与できていなかったりする案件が目立つ一方で、今回紹介したガイドラインに掲載されているような優良な事例についての情報が届いておらず、また同様の取り組みの水平展開が出来ていないことも課題です。

 今回のガイドラインの改訂では、ソーラーシェアリングの普及拡大に向けた農林水産省の意欲が垣間見えるものとなっており、その活用が事業者や農業委員会などの現場で進むことが期待されます。

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