ブランド牛のふん尿を再エネに、兵庫県に1.4MWのバイオガス発電所:自然エネルギー
ブランド牛「但馬牛」などで知られる兵庫県養父市に、家畜のふん尿などを活用するバイオメタンガス発電所が完成。地域のバイオマス資源を活用して発電を行い、農業振興への貢献も目指すプロジェクトだ。
兵庫県養父市に市内で盛んな畜産業が生むふん尿や、食品残渣(ざんさ)を活用して発電を行うバイオマス発電所が完成した。トーヨーグループが建設を進めてきた「トーヨーバイオメタンガス発電所」で、2019年3月28日に竣工式が開催された。
兵庫県北部の但馬(たじま)地域に位置する養父市は、ブランド牛「但馬牛」の飼育地で知られるなど、畜産や農業が盛んな地域だ。同市ではこうした地域の特色を生かした「養父市バイオマスタウン構想」を掲げており、農林水産省から「バイオマス産業都市」の認定も受けている。
トーヨーバイオメタンガス発電所では地域内で発生する家畜のふん尿や、食品加工時に発生する食品残渣をエネルギー源として活用する。これらの原料を発酵させて生成するメタンガスを利用してガス発電を行い、発電した電力は「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」を利用して売電する。
発電所は養父市大藪の約9900平方メートルの土地を利用して建設し、発電出力は1426kW(キロワット)、年間発電量は1200万kWh(キロワット時)を見込む。一般にメタン発酵には向かないとされる鶏ふんを、独自の技術でメタンガスの原料として利用できるようにしたという。さらに事業の副産物として生成される消化液は、安価な有機質肥料として市内の農業で活用する計画だ。
トーヨーグループは今後、同発電所の隣接地にトマトを栽培する植物工場の建設も予定している。栽培には発電所の排熱も活用する方針で、トマトの栽培に必要な環境を整えるため暖房費がかさむ冬季を中心に活用し、エネルギーコストの削減を図る。こうした取り組みによって通年栽培を可能にし、養父市のブランドトマトの確立を図る方針だ。
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