電力自由化から4年、消費者の「スイッチング意欲」は停滞傾向に:電力供給サービス
2019年4月で電力自由化から4年、ガス自由化から3年になるが、消費者の認知度や意識はどう変化したのか――。電通が2018年12月に全国を対象に実施した「エネルギー自由化に関する生活者意識調査」の結果を公表した。
電通は2019年3月、第8回目となる「エネルギー自由化に関する生活者意識調査」を実施(2018年12月に全国20〜69歳男女5600人が対象)し、その結果を公表した。「電力の小売全面自由化」について聞いたところ、自由化を知っている層は、第1回調査(2014年12月)で既に約8割、第3回調査(2016年6月)からは9割台を維持しており、今回も94.2%で、認知は十分に高いレベルにある。
電力の小売全面自由化について、「内容まで知っている」と回答した層は、第1回調査では1割未満であったが、現在では3割台にまで上昇した。また、電力購入先の変更経験者は今回調査で12.4%とまだ低いが、第1回調査から徐々に増加している。同じ電力会社内での料金プランの変更経験については今回調査では前回比若干減の9.3%であった。認知が94.2%であるのに対し、実際に行動した層は計21.7%にとどまった。
電力購入先の変更意向は第2回調査(2015年11月)では2割超となったが、それ以降は低い傾向が続いており、第3回調査(2016年6月)からは1割前後で推移している。
全体の約8割に当たる電力購入先非変更者と料金プラン非変更者のうち、8割弱は新しい電気料金プランの試算すら行っていない。なお、全体の1割に当たる電力購入先の変更経験者の変更回数は1回が大半を占める。
全体の12.4%に当たる電力購入先の変更経験者の6割と、全体の9.3%に当たる料金プラン変更者の5割弱は、それぞれ電気代が「安くなった」と感じている。その額は両者ともに月額1000円程度。しかし両者とも、3割前後の層は「変わらない」と感じている。
自宅の太陽光発電を売電している人のうち、「固定価格買取制度(FIT)における買取期間が2019年から順次終了となる」ことの認知は74.2%に達しており、「少しでも高く買い取ってくれる事業者を探したい」と考える人は41.5%となった。
「電力の送配電分離(発送電分離)」に関する認知は55.2%に上るが、内容までの認知になるとわずか10.2%にとどまった。
一方、「ガスの小売全面自由化」(ガスの調査対象は東京電力・中部電力・関西電力・九州電力管内のみ)については、ガス購入先の変更およびガス料金プランの変更経験者は増加傾向にはあるが、14.2%にとどまっており、電気の21.7%と比べてもまだ少ない状況だ。ガス購入先の変更意向は1割前後で推移している。
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