「100%エネルギー永続地帯」、全国で100市町村に到達:自然エネルギー
千葉大学と環境エネルギー政策研究所が、日本国内における市区町村別の再生可能エネルギーの供給実態などをまとめた最新の報告書を公開。域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している「100%エネルギー永続地帯」は、2018年3月に100市町村に到達したという。
千葉大学と環境エネルギー政策研究所は、日本国内における市区町村別の再生可能エネルギーの供給実態などを把握する「永続地帯」研究を進めており、2019年3月に最新の報告書を公表した。地域のエネルギー需要を上回る量の再生可能エネルギーを生み出している「100%エネルギー永続地帯」は、2018年3月に100市町村に到達したという。
永続地帯とは住み続けるために必要なエネルギーと食糧を地域で生み出すことができる地域のことで、今回の報告書では、2018年3月末時点で稼働している再生可能エネルギー設備を把握し、その設備が年間にわたって稼働した場合のエネルギー供給量を試算した。
各再生可能エネルギーの発電量をみると、2012年7月に施行された「再生可能エネルギー特別措置法に基づく固定価格買取制度(FIT)」の影響で増加した太陽光発電の発電量は、2017年度は2割増加した。しかし、その伸び率は、2014年度6割増加、2015年度約4割増加、2016年度2割増加と鈍化傾向にある。
太陽光以外の再生可能エネルギー発電の中では、2017年度にバイオマス発電が対前年度比7%増加、風力発電が対前年度比5%増加した。小水力発電は引き続き横ばいの状態、地熱発電は減少している。このように、太陽光以外の再エネ発電については、いまだFITの効果が十分に現れていないようだ。
なお、FITの対象となっていない再生可能エネルギー熱は、対前年度比1.9%増とほぼ横ばい状態で、日本の再エネ供給量に占める再エネ熱の割合は20.3%(2012年3月)から、10.1%(2018年3月)に低下した。
再生可能エネルギー電力供給が増加したことで、2012年3月に比べて、2018年3月段階では、再生可能エネルギー供給は2.9倍となった。この結果、国全体での地域的エネルギー需要(民生用+農林水産業用エネルギー需要)に占める再生可能エネルギー供給量の比率(地域的エネルギー自給率)は3.81%(2012年3月)、4.22%(2013年3月)、5.39%(2014年3月)、7.86%(2015年3月)、9.57%(2016年3月)、10.69%(2017年3月)、12.00%(2018月3月)と拡大した。
域内の民生・農林水産業用エネルギー需要を上回る再生可能エネルギーを生み出している市町村(100%エネルギー永続地帯)は、2012年3月に50団体だったが、各年3月段階で55、59、64、78、90、100と年を追って着実に増加している。
さらに、域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市区町村(100%電力永続地帯)も、2012年3月の84団体から現在は157団体と、こちらも同様に増えている。日本全体でみると、再生可能エネルギー供給は「民生+農水用エネルギー需要」の12.00%に達した。
この他、2018年3月末段階で、食料自給率(カロリーベース)が100%を超えている市町村は、566市町村あった(2017年3月末段階では567市町村)。さらに、100%エネルギー永続地帯市町村の中では、前年の44市町村から14町村増加し58市町村が食料自給率においても100%を超えていることがわかった。
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