再エネ水素で工場のCO2を削減、トヨタが水素製造システムを導入:自然エネルギー
トヨタが太陽光発電で水素を製造する小型の水素製造装置を愛知県の工場に導入。製造した水素を燃料電池フォークリフトで利用し、工場の運用におけるCO2排出量の削減に活用する。
トヨタ自動車は太陽光発電の電力を活用し、水素を製造・貯蔵・供給できる小型の水素生成装置「SimpleFuel(シンプルフューエル)」を愛知県豊田市の元町工場に導入したと発表した。この水素を活用して燃料電池フォークリフトを運用し、工場運用におけるCO2排出量の削減を図る狙いだ。
シンプルフューエルは工場敷地内にある太陽光で発電した電力を利用して、水の電気分解により水素を製造する。さらにこの水素を圧縮・蓄圧した上で、燃料電池フォークリフト(FCフォークリフト)に充填(じゅうてん)するまでの工程を、一貫して対応できる水素ステーションだ。水素の製造量は、最大99Nm3(ノルマル立法メートル)/日で、FCフォークリフト7〜8台分の充填ができる。また、サイズもコンパクトであるため、小さいスペースでも容易に設置でき、工場内でFCフォークリフトに充填する用途に適しているという。水素発生方式はアルカリ水電解方式で、水素充填圧力35Mpa、貯蔵量は72.18Nm3。
元町工場では、FCフォークリフトの導入拡大に伴い、2018年3月に水素ステーションを稼働していた。今後の水素の需要増を見据えて、同充填装置の活用により、供給面での対応を図り、元町工場でのCO2排出削減に貢献するとともに、新たな技術や知見の蓄積を進めていきたいと考えている。
工場でのCO2排出量削減に向けて、現在使用しているエンジン式フォークリフトをFCフォークリフトに置き換えていく予定であり、まずは元町工場で豊田自動織機製のFCフォークリフトを2017年に2台、2018年に20台導入した。今年は環境省の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(再エネ水素を活用した社会インフラの低炭素化促進事業)」を活用し、同充填装置を導入したほか、FCフォークリフトをさらに50台追加した。
なお、トヨタは愛知県をはじめ関係自治体、企業とともに、「あいち低炭素水素サプライチェーン推進会議」を通じて、再エネを活用し「つくる・はこぶ・つかう」という水素のサプライチェーン全体の低炭素化を推進している。今回の再エネ由来水素を使用する取り組みは、愛知県が制定した「低炭素水素認証制度」により、認定を受けた。
トヨタは2015年に公表した「トヨタ環境チャレンジ2050」の一つとして、「工場CO2ゼロチャレンジ」の実現に向け、工場での水素利用を目指して水素エネルギー活用技術の開発・導入を進めている。この一環として、元町工場において同充填装置やFCフォークリフトの導入・利用を推進しており、今後も「工場CO2ゼロチャレンジ」の実現に向けた取り組みを進める方針だ。
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