燃料電池×CO2回収で目指す“究極の石炭火力発電”、実証が第3フェーズに:エネルギー管理
コストが安い石炭を利用しながら、CO2排出せず、発電効率も高い――。こうした究極の石炭火力発電技術の開発を目指す大崎クールジェンプロジェクトがまた一歩前進した。プロジェクトの第3段階に当たる、CO2分離・回収型石炭ガス化複合発電(IGCC)設備に燃料電池を組み込んだ、CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業に着手した。
中国電力と電源開発の共同出資会社である大崎クールジェンはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と「大崎クールジェンプロジェクト」の第3段階にあたるCO2分離・回収型石炭ガス化複合発電(IGCC)設備に燃料電池を組み込んだ、CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業に着手した。
今回の第3段階では、2019年度中に完成予定の第2段階で建設するCO2分離・回収型酸素吹IGCC実証設備に燃料電池を組み合わせ、石炭ガス化ガスの燃料電池への適用性を確認し、最適なCO2分離・回収型IGFCシステムの実現に向けた実証を行う。500MW(メガワット)級の商業機に適用した場合に、CO2回収率90%の条件で47%程度の送電端効率(HHV)達成の見通しを立てることを目標とする。
今後、高効率な石炭火力発電とCO2分離・回収が両立する技術を確立し、国内外で本技術を普及させることで、世界的なCO2排出量抑制(地球温暖化対策)への貢献を目指す。
石炭は、供給安定性が高く経済性にも優れることから、エネルギー自給率が極めて低い日本にとって重要な1次エネルギー源であり、発電分野においても石炭火力発電は発電電力量の約3割を占める。一方で、石炭は他の化石燃料と比べると、燃焼時の単位発熱量当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が多く、地球環境面での制約要因が多いという課題を抱えており、石炭火力発電についてもさらなるCO2排出量の抑制が求められている。
そこで、石炭火力発電から排出されるCO2を大幅に削減するため、究極の高効率石炭火力発電技術であるIGFCとCO2分離・回収技術を組み合わせた革新的な低炭素石炭火力発電の実現を目指すのが大崎クールジェンプロジェクトだ。
IGFC実証事業は、酸素吹IGCC実証(第1段階)、CO2分離・回収型酸素吹IGCC実証(第2段階)、CO2分離・回収型IGFC実証(第3段階)で構成し、中国電力の大崎発電所構内に建設した17万kW(キロワット)規模の実証試験設備で、システムの性能や運用性、信頼性、経済性について検証する。
2017年3月から開始した第1段階の実証試験では、17万kW規模の実証プラントとしては世界最高レベルの効率となる送電端効率40.8%(HHV)を達成し、500MW級の商業機での送電端効率約46%の達成に見通しが立ったという。また第2段階の実証のため、現在、CO2分離・回収設備の建設工事を進めており、2019年夏をめどに試運転を開始し、その後本格的な実証試験に乗り出す予定だ。
そして今回、第3段階の実証設備の設計作業を開始し、CO2分離・回収型酸素吹IGCC設備に燃料電池を組み込んだCO2分離・回収型IGFCの実証事業に着手した。第2段階までで建設したCO2分離・回収型酸素吹IGCC実証設備に燃料電池を組み合わせて石炭ガス化ガスの燃料電池への適用性を確認し、最適なCO2分離・回収型IGFCシステムの実現に向けた実証を行う。
事業の総額は73億3000万円で、期間は2018年度から2022年度まで。
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