トヨタ・TRENDE・東大、ブロックチェーンを活用した太陽光電力のP2P取引を実証:エネルギー管理
東電傘下のTRENDE、トヨタ、東京大学が、ブロックチェーンを活用し、電力網につながる住宅や事業所、電動車間での電力取引を可能とするP2P電力取引システムの実証実験を実施すると発表した。
東京電力ホールディングス傘下のベンチャー企業のTRENDE(東京都千代田区)は、東京大学、トヨタ自動車と共同で、ブロックチェーンを活用し、電力網につながる住宅や事業所、電動車間での電力取引を可能とするP2P電力取引システムの実証実験を実施すると発表した。2019年6月17日からトヨタの東富士研究所と周辺エリアで実施する。
太陽光パネル・蓄電池・電動車などの分散型電源の普及に伴って、国内の電力供給システムは、従来の大規模集約型から個人や企業が電源を保有する分散型への移行期にある。今回の実証実験は、分散型電源を保有する需要家(プロシューマー)と電力消費者が、電力を売買できる市場を介して、需給状況に応じた変動価格で電力を売買することの経済性と、プロシューマーが発電した電力を、他の需要家と直接売買する双方向・自律型の電力供給システムの有効性を検証することを目的としている。
具体的には、実証実験に参加する家庭や事業所がアクセスできる電力取引所を新設するとともに、家庭や事業所ごとにAIを活用したエネルギー管理システム(電力売買エージェント)を設置する。電力売買エージェントは、家庭や事業所の電力消費と太陽光パネルの発電量予測に応じ、電力取引所に電力の買い注文・売り注文を出し、各家庭や事業所から電力取引所に集約された買い注文・売り注文を一定のアルゴリズムでマッチングさせて、電力の個人間売買を実施する。
同実証実験は、太陽光パネルや蓄電池に加えて、世界で初めて(TRENDE調べ)というPHVを分散型電源として組み合わせた個人間電力売買の実証実験となる。実証実験を通じて、電力消費者とプロシューマーが、市場取引を通じて電力を売買することの経済性を検証するとともに、距離別託送料金のシミュレーションや航続距離に応じて電力消費量が変化する電動車の電力需要予測アルゴリズムの検証を行う。
実証期間は2020年5月(1年間)までの予定。実証に参加するモニターは、一般家庭が電力消費者(PHV有り、PHV無しの2タイプ)とプロシューマー(太陽光パネルのみ、太陽光パネル+蓄電池、太陽光パネル+PHV、太陽光パネル+蓄電池+PHV、の4タイプ)および事業所(太陽光パネル+PHVチャージャー)としている。
実証実験で、トヨタは車両用電力売買エージェントの開発を行う。東京大学は電力取引所の構築と事業所用電力売買エージェントの開発を担当。TRENDEは家庭用電力売買エージェントの開発に取り組む。
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