再エネ活用をCSRから事業戦略に!リサイクル業界で初めてRE100を宣言したエンビプロHDの狙いとは:自然エネルギー
2018年7月にリサイクル業界としては世界で初めて「RE100」に加盟したエンビプロ・ホールディングス。再エネの活用を、CSRではなく事業戦略として生かそうとしている同社の取り組みを取材した。
2018年7月にリサイクル業界としては世界で初めて「RE100」に加盟したエンビプロ・ホールディングス。同社がRE100に加盟した背景や、再生可能エネルギー100%の実現に向けた戦略について、同社執行役員 環境事業推進部長と、同社のグループ会社でエネルギー関連のコンサルティング事業を手がけるブライトイノベーションの代表取締役社長を務める中作憲展氏に聞いた。
エンビプロHDがRE100に加入した理由
エンビプロ・ホールディングスでは、ミッションステートメントとして「持続可能な社会の一翼を担う」を掲げています。具体的には、資源とエネルギーを持続的に利用・循環させる技術と循環システムの構築で社会インフラの根幹を支え、社会の持続可能性を高めていくとしており、RE100への加盟も、このミッション実現のための一貫と捉えて取り組んでいます。
現在、サプライチェーン全体でCO2をどのように削減していくかということが多くの企業のテーマとなりつつあります。サプライチェーンでは、部品の調達、流通、運搬、製造、販売、そして最後に廃棄があります。エンビプロ・ホールディングスが5年間の長期戦略であるサステナビリティー戦略の実行初年度からRE100を宣言しているのは、こうした廃棄物を排出する企業のサプライチェーンに組み込まれるリサイクル会社になることを目的としているためです。
サプライチェーンの最後に位置する廃棄プロセスを手がける企業で、事業全体を再生可能エネルギーで運営している例は、まだいないと考えています。そこで、廃棄物のリサイクルができ、かつそのリサイクルプロセスで使用されるエネルギーが100%再生可能エネルギーとなれば、RecyclableかつRenewable Energyとなり、サプライチェーン全体でCO2削減を目指そうとする大企業から、リサイクルパートナーとして選ばれるポジションの確保できるのではないかという狙いです。
エンビプロ・ホールディングスでは、RE100宣言をCSRではなく事業戦略そのもの一部として考えていますので、事業運営自体を再生可能エネルギー100%でおこなうという目標は高いハードルですが、グループ全体でシナジーを生む取り組みとして継続して取り組んでおります。
コンサルティング事業とのシナジーも
エンビプロ・ホールディングスの子会社であるブライトイノベーションは、環境経営コンサルティング会社として「コンサルティング&ソリューション」のコンセプトで事業を展開しています。コンサルティングは通常、机上で終わってしまいますが、実際にCO2を削減しようとすると、太陽光発電の設置や再エネ電力への切り替え、環境価値証書の購入などのソリューションが必要となります。コンサルティングで戦略を描き、実行フェーズでそのソリューションを提案することでクライアントのニーズにワンストップでお応えでき、サービスの差別化が図れると考えております。
環境経営コンサルティング会社として、ブライトイノベーションは、クライアントのCO2削減等を支援していますが、グループ内でのRE100推進のための実務を通して蓄積される再エネ導入や再エネ電力への切り替え等のCO2削減手法に関するノウハウは、そのまま、コンサルティングノウハウの蓄積につながり、大変シナジー効果のある事業であると認識しています。
第三者所有モデルで施設のRE100を達成
グループ会社であるしんえこのリサイクル施設「しんえこプラザあづみ野」に関しても、再生可能エネルギーの活用に関して、新しい、実験的な試みをおこなっています。
この施設は、ブライトイノベーションがワンストップで再エネ導入計画から設備導入まで行った案件で、既に当施設は、RE100を達成しています。太陽光発電設備は、ブライトイノベーションが所有し発電した電力を自家消費売電する、いわゆる第三者所有モデルです。太陽光パネルは、リサイクル事業とのシナジー効果を考え、敢えてリユースパネルを利用しています。もちろん太陽光発電の自家消費だけではRE100は達成できませんので、小売電気業者から、RE100で認められている再エネ電気を提供してもらっています。
RE100の達成に向けて
エンビプロ・グループ全体としては、2050年をRE100達成の目標年度としておりますが、現時点でのRE100達成率は、約20%程度となっています。2050年は、あくまでも目標ですので、再エネ電力や再エネ設備のマーケット価格、制度変更の状況を見極めながら、適切なタイミングで再エネ導入を推進していければと考えております。過大な投資で無理して早期に100%にするのではなく、上記要件をよく見極めながらその時々で最適なソリューションを選択しながら推進していくというのが当社の考えです。これから、さまざまなタイプの再エネソリューションが出てくると思いますので、コンサルティングを通して得られる最新の再エネ市場情報や技術情報を上手く活用し、グループの再エネ普及活動に取り組んでいきたいと思っております。
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