DELIAが目指すブロックチェーンで創る「分散型エネルギーの経済圏」とは何か――代表・中村氏に聞く:和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(13)(3/3 ページ)
ブロックチェーンによる分散型エネルギーの情報基盤の開発、およびビジネス応用に関わる技術取得とアプリケーション開発を目的としてユニークな活動している団体がある。一般社団法人「DELIA」である。では、その設立主旨や狙いは何か、また今後の具体的活動はどうしようとしているのかなど、代表理事を務める中村良道氏にインタビューを行った。
独自の通貨「JWAT」とは何か?
和田氏 DELIAのもう一つの柱であるJWATとはどのようなものでしょうか。
中村氏 JWATはトークンを活用して、エネルギーの取引、エネルギー設備投資、電力消費をつなぐ役割を果たします。このため、新たな組織「JWAT WAVE(仮)」を2019年秋頃に立ち上げ、エネルギーにひも付いたトークン(ポイントのようなもの)「WAT券」の発行を目指しています。なぜWAT券を目指したかと言えば、エネルギーにひも付くトークンとすることで、分散型エネルギー時代における新しい経済システムの実現に向けたメッセージを伝えることができると考えたからです。今後どのような社会にもっていけたら良いかを伝えることができると。ここが今までのコンソーシアムと全く異なる点です。
DELIA 2019年の活動は
和田氏 さて、最後に2019年の活動はどのように進めるのでしょうか。
中村氏 幾つかありますが、ベースとなるのはやはり国土強靭化と分散型エネルギーの新たな関係づくりだと思っています。分散型エネルギーを頼りになるものに変えるために、V2G&バッテリーの設置に向けたソリューションを具体化したいと思います。次に、2019年2月に株式会社chaintopeと連携することを公表しました。これは、chaintopeが得意とするブロックチェーンの基盤技術の活用により、DELIAは早く分散型エネルギーのマネジメントシステムが実現できると期待したものです。chaintopeはアジア・アセアン地域に強く、今後アジアに向けたサービスにも協力したいと思います。そして、JWAT WAVE(仮)を設立し、WAT券の発行を目指したいと考えています。
取材を終えて
取材前、分散型エネルギーに関してはかなり知っていると思っていたが、今回のDELIAの活動にて、ブロックチェーン「BBc-1」やトークン(ポイント、暗号資産)を組み合わせた新しいビジネスプラットホームを創ろうと活動していることに驚かされた。
それぞれの基盤技術であるブロックチェーン技術BBc-1やトークンは、まだ開発途上にあり、特に日本においては、なじみの少ない分野である。これらを分散型エネルギーという電力分野に応用することに意義があり、また初めてのため苦労もあるであろう。さらに、将来WAT券の発行まで想定しており、今後エネルギーのやり取りの中で、新たな分散型エネルギーの経済圏が創出されるのであろうか。
DELIA代表理事である中村氏は、これまでも再生可能エネルギー拡大による分散型エネルギーの必要性を訴えており、今回はこれまでの知見と新たな技術、さらにはビジネスとしての経済面までも考慮しての活動を行っている。現在はまだスタートしたばかりであるが、将来大きな規模となり、世の中に貢献できるビジネスとなっていくことに期待したい。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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