世界初のソーラーシェアリング国際学会、その中で見えてきた日本の課題とは:ソーラーシェアリング入門(17)(3/3 ページ)
昨今注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」について解説する本連載。今回は2019年7月に韓国で開催された「営農型太陽光発電国際シンポジウム(International Symposium on Solar Energy in the form of farming)」に筆者が参加した内容を踏まえ、各国のソーラーシェアリング事情について解説します。
国際シンポジウムを通じて見えてきた日本の課題
今回の国際シンポジウムへの参加を終えて感じたことは、想像以上に各国での技術研究や実証が進んでいるという現実と、日本が2000年代以降にたどった太陽光発電産業の隆盛と凋落(ちょうらく)を、再びたどろうとしている現実です。国内各地で民間ベースの取り組みから、国の政策へと持ち上がってきた日本の現状は、事例の多さでは他国の追随を許さないものの、政府系の研究機関や大学などによる体系的な農業技術研究や設備設計に関する研究は大きく遅れており、個別事業者の努力によって普及と技術開発が支えられている状況です。
一方で、ドイツでは世界的な太陽光発電技術研究機関であるFraunhofer ISEが長期間にわたって研究に取り組んでおり、韓国では政府の号令によって農業や電力のほか国内メーカーが実証試験に参加し、この3年ほどで農業生産や設備設計の研究開発が急速に進められています。この日本と諸外国の対比、特に技術開発や産業育成における公的な取り組みや業界的な取り組みの対象は、営農型太陽光発電に限らず他の産業分野でも見られてきたように思います。
そして、かつて2000年代には世界最大の太陽電池出荷量とシェアを誇っていた日本も、国内での普及政策の失敗や世界的な市況の変化に対応できず、結果として世界シェアを落とし、FIT導入後は国内市場を海外メーカーに席巻されることになりました。これと同じことが、営農型太陽光発電でも起きていくことが懸念されます。一方で、もはや国内のみの市場拡大や技術開発にこだわる時代ではなく、国際的な協力体制によってこの営農型太陽光発電という仕組みを拡大していくステップに入ったとも言えるでしょう。
今回の国際シンポジウムを契機として、農業とエネルギーという人類の普遍的な資源確保の課題解決に向けた、国境を越えた取り組みを進めていこうと思います。
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