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日本政府が世界に表明した環境戦略に、ソーラーシェアリングはどう織り込まれたか?ソーラーシェアリング入門(18)(1/2 ページ)

昨今注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」について解説する本連載。今回は日本政府が2019年6月に閣議決定した「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の中に、ソーラーシェアリングが織り込まれた件について解説します。

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 マスメディアではあまり大きな話題として取り上げられませんでしたが、2019年6月11日に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定されました。これは、「パリ協定に基づく温室効果ガスの低排出型の発展のための長期的な戦略」(以下、長期戦略)として政府が策定したもので、パリ協定の中でその策定が各国に奨励されており、同年6月26日付で日本政府から国連気候変動枠組条約事務局に提出もされています。すなわち、長期戦略の中に記載された事項は国際社会に向けた約束になっているのです。

 この長期戦略の中には、エネルギー分野だけにとどまらない多様な対策・施策が含まれていますが、実はその中にソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が具体的な施策の1つとして盛り込まれました。

 ソーラーシェアリングが登場するのは、長期戦略の32ページ目にある「第2章:各部門の長期的なビジョンとそれに向けた対策・施策の方向性」の「第1節:排出削減対策・施策」内にある「4.地域・くらし」です。具体的な温室効果ガスの排出削減対策・施策について取りまとめた章の中で、農山漁村における資源の活用として下記のように取り上げられています。

 特に、農山漁村においては、豊富に存在する多様な資源を最大限活用し、地域主導によりバイオマス、営農型太陽光発電を含む再生可能エネルギーや水素を創出し、地域内で活用する。さらに、農山漁村域外に供給することにより、我が国の温室効果ガスの大幅削減に貢献する。

 ここでの書きぶりとしては、バイオマスと同列に並んで農山漁村における地域再生可能エネルギー源として営農型太陽光発電に個別の言及がなされており、その位置づけの重要性が伺える内容になっています。そして、「取り組みの例」として下記のようなもっと具体的な記述もなされています。

 荒廃農地のように有効な活用がされていない農地などに、農業生産が可能な形で太陽光発電パネルを設置し適切な営農を継続することで(営農型太陽光発電)、再生可能エネルギーの拡大とともに、事業の経済性を高め、地域の持続可能な社会形成に資する。

 ここには営農型太陽光発電の特徴が端的に盛り込まれていますが、その導入の効果に関する記述では荒廃農地の再生や再生可能エネルギーの拡大にとどまらず、農業そのものの経済性を高めると共に、持続可能な社会形成を含めた包括的な視野に立った内容になっている点が特徴的です。

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