「EV×太陽光」で若者の地元離れを防げ! 岐阜県で“蓄電池をシェア”する新事業がスタート:自然エネルギー(3/3 ページ)
太陽光発電と電気自動車を活用し、地元企業の人材確保にも貢献ーー。岐阜県多治見市でこうした再エネの普及と地域の課題解決を目的としたバッテリーシェアリング事業がスタート。その取り組みの様子をレポートする。
パナソニックがバックアップ、全国のモデル事業に
バッテリーシェアリングの要となる太陽光関連機器は、パナソニックがサポートする。ソーラーカーポートの屋根上には、同社の太陽電池モジュール「HIT」を供給。クルマ4台が駐車できる標準タイプのカーポートで、設置されるHITは40枚、最大出力13kWを発生する。これを2台のパワーコンディショナ(合計定格出力9.9kW)で制御し、同じくパナソニック製のEV充電器とともに、エネファント(たじみ電力)が遠隔でコントロールする。
「働こCAR」の立案にも協力したパナソニック統合プランニング課の西川弘記主任技師は、バッテリーシェアリングの意義を次のように述べている。「日照条件が良く、道路交通のアクセスに優れた多治見市は、モビリティを活用した再エネ型分散電源の活用に適している。パナソニックは再生可能エネルギーを中心としたビジネス支援に力を入れているが、ここでの取り組みを分散型電源を目指す都市のモデルにしていきたい。地方の電気工事会社や工務店・販売店などを多く抱えるパナソニックとしては、地域でやっていけるこうした取り組みを応援することは、共存共栄のビジネスモデルを作りあげることでもある」(西川氏)
2019年10月現在、エネファントとレンタカー契約を結んでいる企業は、多治見市内の3社。計4人の新入社員にEVが貸与されている。まだ始まったばかりの取り組みだが、他に約30社が導入を希望している。エネファントとしては、近年中に100台規模のレンタカー契約締結を目指していく考えだ。
レンタカーとして使われるEVには、日産リーフが採用されている。現在はオークションで中古のリーフを調達しているが、規模拡大に向けては、調達ルートの拡充も図っていきたいところだろう。エネファントを見学に訪れた日産自動車マーケティング部の渋田聡子主任は、「中古車部門と連係して応援体制を組んでいきたい」と話しており、今後両社の協業も期待される。
大規模自然災害が続く昨今、いざという時には非常用電源にもなるEVへの関心は高い。若者の地元離れくい止めることや、エネルギーの地産地消は、地方都市共通のテーマでもある。人口約11万人の多治見市で始まった取り組みが、いま多くの企業を巻き込み、全国のモデル事業になろうとしている。地域課題を解決するエネルギービジネスの新しい形がここにある。
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