人命を守る「防災情報」を止めないために――「特務機関NERV」の災害対策車が登場:電気自動車(2/2 ページ)
災害時に防災情報の配信を止めないために――。ゲヒルン、三菱自動車、スカパーJSATの3社が、災害時に停電や通信網が途絶した場合でも防災情報を配信できる災害対策車を発表。2020年2月1日から、東京と札幌の2エリアで運用を開始する。
石森氏の提案に三菱自動車とスカパーJSATが賛同
今回の災害対策車両は、石森氏の提案に三菱自動車とスカパーJSATが賛同し、2019年3月の立ち上げからわずか9カ月で完成したという。
ベースとなっている車両は三菱自動車の「アウトランダーPHEV」。エンジンで発電が可能なプラグインハイブリッド車であることや、走破性やメンテナンス性などが採用の決め手になったとしている。
アウトランダーPHEVは容量45kWh(キロワット時)の蓄電池と、AC100Vコンセントを2口搭載。合計1500W(ワット)の電力を取り出すことが可能で、ガソリン満タンの状態であれば、平均的な家庭の約10日分の電力を供給できるという。
防災情報伝達の核となる通信機器に関しても、17機の衛星の利用によって、あらゆるエリアにおいてインターネット接続が行いやすいこと、車載に適した小型の平面アンテナを利用し、導入費用も安価で、安定したWi-Fiネットワークの構築が可能といった理由から、スカパーJSATのシステムを採用した。
さらに車両には内閣府宇宙開発戦略推進事務局準天頂衛星システム戦略室から貸与された、準天頂衛星「みちびき」を利用した衛星安否確認サービス「Q-ANPI」を利用できる端末も搭載。これにより、みちびきを利用した災害用通信も確保できるようになっている。
石森氏は今回のプロジェクトの狙いを「『自助』『共助』『公助』の実現」と話す。自助とは自力での電力と通信網を確保できること、共助は自治体が開設する避難所にインターネット接続や電力などを提供できること、公助は衛星安否確認サービス「Q-ANPI」によって、避難者の安否や避難所の状況を防災機関などに随時提供できるようにすること――という意味が込められている。
車両の運用は2020年2月1日から東京と札幌の2エリアでの展開だが、今後はこの車両をモデルケースとして提案し、全国の自治体やさまざまな企業との連携・普及を目指す方針だ。
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