太陽光の電力をレドックスフロー電池で最適化、埼玉工大が実証実験をスタート:蓄電・発電機器
埼玉工業大学がレドックスフロー電池をキャンパス内に設置し、太陽光発電などの再生可能エネルギーを有効利用する実証実験を開始。再エネの出力変動対策に有効というレドックスフロー電池を活用したシステムの実用化を目指す方針だ。
埼玉工業大学は2020年3月11日から、レドックスフロー電池をキャンパス内の「ものづくり研究センター」に設置し、太陽光発電などの再生可能エネルギーを有効利用する実証実験を開始した。
レドックスフロー電池は、電池反応による部材の劣化が生じないため、充電・放電を繰り返しても長寿命という特徴を持つ。さらに、不燃性の材料によって電池が構成されており、発火などの現象も起こらず、出力変動の大きい再生可能エネルギーとの組み合わせに適しているという。
今回のシステムでは、板状の電池セル40枚を1セットとしたセルスタックを1つ設置。バナジウム系のレドックスフロー電池で、出力は5.0kW(キロワット)、容量は6.6kWh(キロワット時)。学内に設置した出力3.1kW(太陽光パネルベース)の太陽光発電の電力うち、館内照明などで利用する分を差し引いた余剰電力を蓄電する。系統からの充電にも対応し、曇りの日など、館内消費の必要量に対して太陽光発電だけでは足りない場合は、レドックスフロー電池から自動的に放電を開始し、太陽光発電の電力と合わせて館内照明に給電できるシステムとなっている。
今回レドックスフローを導入した埼玉工業大学のものづくり研究センターは、大学創立40周年を記念して2016年に自然エネルギーを生かした環境配慮型の研究センターとして建築されている。太陽光発電や自然空調、地中熱利用システムの他、完成時点からレドックスフロー電池の1号機を導入し、これまで約3年間にわたって検証研究を実施してきた。
今回導入したのは2号機となるレドックスフロー電池で、これまでの検証研究成果を基に韓国のエネルギー関連企業HI GROUP Energy&HVACと共同開発したもの。電池本体(セルスタック)を大きくすることなく、電解液タンクに貯める電解液量を増やすことにより電池の大容量化が可能な他、高負荷の変動への対応にも優れていることから、出力変動の大きい再生可能エネルギー用の蓄電池として適しているという。
埼玉工業大学では今回実証を行うシステムについて、電力の地産地消や、災害時の非常用電源としての役割を期待しており、実証実験を通じシステムの実用化を目指す方針だ。
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