室内光で世界最高クラスの発電効率、東洋紡が有機薄膜太陽電池セルを開発:太陽光
東洋紡が開発中の有機薄膜太陽電池用の発電材料を利用し、薄暗い室内で世界最高レベルの変換効率を実現する太陽電池セルの開発に成功。まずは温湿度センサーや人感センサーなどのワイヤレス電源用途で、2022年度中の採用を目指す方針だ。
東洋紡は2020年3月23日、開発中の有機薄膜太陽電池用の発電材料を利用し、薄暗い室内で世界最高レベルの変換効率を実現するガラス基板の太陽電池セルなどの開発に成功したと発表した。2019年夏からフランス政府機関CEAと進めている共同研究による成果で、今後、温湿度センサーや人感センサーなどのワイヤレス電源用途向け材料として提案を進め、早期の実用化を図る方針だ。
有機薄膜太陽電池は、炭素や硫黄原子などを含む有機物の発電材料を溶媒に溶かし、電極を有するガラスやプラスチックの基板上に塗布する方法などで作製される太陽電池。軽くて薄い特徴があり、形状の自由度も高いため、一般的な太陽電池では設置が難しかった壁面や布地などにも貼り付けることができる。こうした特性から、IoT機器や各種センサーのワイヤレス電源になるとして期待されている次世代太陽電池だ。
東洋紡ではファインケミカル事業で培った有機合成技術を応用し、低照度の室内用光源でも高い出力が得られる有機薄膜太陽電池用発電材料の開発に取り組んできた。開発中の材料はノンハロゲンの溶媒にも容易に溶かすことができ、塗布時のむらが抑えられるため、個体差が少なく安定した発電が可能という。同社では実用化に向けて2019年6月からCEAと共同研究を開始し、溶媒の種類や塗布手法の最適化を進めてきた。
同社は今回、この材料を用いガラス基板を持つ小型の有機太陽電池セルの試作に成功。薄暗い室内と同等である220ルクスのネオン光源下の検証で、卓上電卓に使用されるアモルファスシリコン太陽電池の1.6倍に相当し、世界最高クラスという約25%の変換効率を確認できたという。さらに、ガラスよりも発電材料の塗布が難しいという、PETフィルムを基板にしたモジュールの作製にも成功。有効面積18平方センチメートルの試作品で、同照度下で約130μWの出力を達成した。
今回の共同研究で得たノウハウをもとに、東洋紡では今後、電池メーカーを中心に開発した材料の提案を進める。まずは温湿度センサーや人感センサーなどのワイヤレス電源用途で、2022年度中の採用を目指す方針だ。
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