太陽光の“明暗分かれた”2020年度のFIT価格、ソーラーシェアリングへの影響は?:ソーラーシェアリング入門(28)(2/2 ページ)
太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は経産省が2020年3月に発表した2020年度のFIT価格と、ソーラーシェアリング市場への影響について考察します。
2020年度のFIT価格、ソーラーシェアリングに与える影響は?
さて、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に絡むところを見ていくと、まず高圧の入札範囲が500kW以上から250kW以上に引き下げられたのは、1つのネガティブ要素です。1町歩(1ha)の農地に遮光率35%程度で設置した場合、太陽光パネルの出力ベースで600〜700kWpくらいの収まりが良く、この農地事情を考慮した効率的な設置パターンが入札側に追いやられてしまいました。
一方で、低圧規模では原則として自家消費型の地域活用要件が設定され、この範囲の野立ては全量FITの適用から排除されました。ただ、ソーラーシェアリングは10年間の農地一時転用許可の要件を満たし、非常時に自立運転が可能な仕組みを備えることを条件に、全量FITが認められることになりました。これは、これまでのFIT制度における太陽光発電の取り扱いの中でも特に例外的な出来事で、ソーラーシェアリングの普及にとってはポジティブ要素です。
今回設定された、この全量FITの対象となる条件を満たすソーラーシェアリングの10年間の一時転用許可を得るには、農林水産省が定める下記の条件のいずれかを満たす必要があります。
- 担い手が、自ら所有する農地又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する農地等を利用する場合
- 荒廃農地を再生利用する場合
- 第2種農地又は第3種農地を利用する場合
2020年度以降、確実に増えてくると予想されるのは3つ目のパターンです。これまで農地を永久転用して、野立ての太陽光発電が設置されてきた第2種・第3種農地を、ソーラーシェアリングで事業化すれば10年以内の一時転用許可を受けることが出来ます。これであれば土地の区分だけが条件となるので、上記の1つ目の要件を満たすよりは取り組みやすいでしょうし、最大限の農地保全を図るという農地行政が目指すところにも貢献すると考えられます。ただし、農業が安定して行われるかどうかは10年許可の直接の条件とは別の視点になってしまうため、全量FITの取得に主眼を置いた発電事業の粗製濫造を招く可能性も否めませんから、農業行政側がしっかりとチェックしていくことが必要です。
太陽光に対する政策方針が明確になった2020年
2020年度に向けたFIT制度の見直しで、太陽光発電については全体的に抑制方向で進めるという経済産業省・資源エネルギー庁の姿勢が、これまでより一層鮮明になってきました。これまで導入件数の95%を占めてきた低圧規模の野立てが、自家消費要件の設定で事実上FIT制度から排除され、高圧・特別高圧規模も累計25GW以上が導入されてきたにも関わらず、2019年度は入札枠が716MW(当初750MW)に抑制されてきました。仮に入札枠が2020年度に1GWになったとしても、累計値を単年度割りした約3GWには遠く及ばす、「FITによる太陽光発電の導入抑制」という明確な政策シグナルが示されています。
正しい政策立案の手順を踏まえれば、FITの支援で導入していく規模と、FIT外で導入されるだろう規模の予測値を根拠と共に示し、これまでと同等かそれ以上の導入量を確保できることを説明しなければなりません。しかし、未だに2030年のエネルギーミックス改定の動きも見られず、間もなく太陽光発電の2030年目標を達成しそうな状況下では、経済産業省の立場としてエネルギーミックスと矛盾するような導入計画を示すことは出来ないのでしょう。
とは言え、世界的には年間100GW以上の太陽光発電が導入される中にあって、かつて太陽光発電大国であった日本が遅れをとり続ける状況も忍びないです。少なくとも、諸外国の注目と期待を集めるソーラーシェアリングだけでも、その普及拡大に引き続き取り組んでいこうと思います。
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