微生物燃料電池の仕組みでCO2をメタン変換、西松建設らが開発に成功:自然エネルギー
西松建設と群馬大学が微生物燃料電池の仕組みを利用したCO2のメタン変換に成功。温暖化ガスとなるCO2を再利用できる、カーボンリサイクル技術の実現につながる成果だという。
西松建設は2020年4月14日、群馬大学と共同で、微生物燃料電池(Microbial Fuel Cells、以下MFC)を応用したCO2変換セルによるメタン生成に成功したと発表した。MFCの仕組みを活用して構築したアノード(負極)槽と、電子を受け取ってCO2からメタンを生成する微生物群を植種したカソード(正極)槽を組み合わせたCO2変換セルを試作し、発生した電流の50%近くを利用して外部から供給したCO2をメタンに変換できたという。
MFCとは、例えばヘドロなど底質中の嫌気性発電細菌による有機物分の分解(代謝)で生じた電子を、底質中に設置したアノードを経由し、水中に設置したカソード(正極)上で溶存酸素と反応させて発電する技術。
西松建設は今回、このMFCで構築した発電微生物菌相を用いた底質浄化型アノードとCO2をメタンに変換する微生物(メタン生成菌)を植種したカソードを統合し、CO2変換セルとしてラボ実験レベルで試作した。現状で外部の印加電圧は必要であるものの、装置内に発生した電流のうち50%近くをCO2からのメタン変換に利用することが可能だという。またこの過程でCO2をメタンに変換するカソードの微生物にはメタン生成古細菌の他、ジオバクターなどの発電微生物が寄与していることも明らかにしたという。
今回開発した技術は、底質浄化で得られた電力で直接CO2をメタンに変換できるため、従来のCO2変換に必要であった外部エネルギーや光エネルギーを削減または不要にできるメリットがあるという。また、底質浄化以外でも、例えば工場などで発生した有機性排水を浄化・発電しながらCO2をメタン等の有用物質へ転換を行うことも可能とする。生成したメタンガスを燃料として使用し、後に発生するCO2を再度変換して循環利用することで、カーボンリサイクル技術としても期待できるという。
西松建設ではこの技術が実用化できれば再生可能エネルギーの利用促進、環境浄化、カーボンリサイクルを同時に達成することが可能になると期待しており、今後はさらなる発電効率やCO2変換効率の向上を目指して研究開発を継続していく方針だ。
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