日本のエネルギー政策に転機の兆し、再エネ・ソーラーシェアリングはどうなるのか:ソーラーシェアリング入門(34)(3/3 ページ)
「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。政府が“エネルギー政策の転換”ともいうべき発表を相次いで行った2020年7月。それにより今後の再エネ市場は大きく変化すると見られるなかで、ソーラーシェアリングはどのような位置付けになっていくのかを考察します。
高まるソーラーシェアリングの重要性
太陽光発電の更なる大量導入が必要とすると、どの程度の規模になるでしょうか。仮に2227億kWhの追加的な再生可能エネルギー導入が必要として、そのうち年間1500億kWhを太陽光発電で確保するとすれば、1億1000万kW程度の設備が必要です。これをソーラーシェアリングに置き換えてみると、1億1000万kWの導入に必要な農地面積は14万haほどです。これは、国内の農地面積約440万haの3%で足ります。実際には太陽光パネルの性能向上が目覚ましく、10年前と比べても同じサイズの太陽光パネルで1.5倍以上の発電量が得られるようになっており、必要な面積はより少なくなっていくでしょう。
しかも、ソーラーシェアリングの場合はエネルギー消費地である都市部の外周にある農地を活用することで、必ずしも大規模な送配電網に対する投資を行わずとも導入が可能です。その点でも、大量導入のために必要な時間が短くなります。東京都を中心とした一都三県でも22万4620haの農地があり、もしその10%にソーラーシェアリングを設置すると年間250〜300億kWh程度の発電量が見込めます。
このソーラーシェアリングの導入ポテンシャルは、今年5月に太陽光発電協会(JPEA)から公表された「PV OUTLOOK 2050」でも挙げられており、太陽光発電の2050年時点の最大導入ケースで1億1600万kW(116GW)の導入想定が示されています。下記の図の赤枠の中が、農業関連となっています。
関連記事
- 太陽光発電と農業を両立、いま「ソーラーシェアリング」が注目される理由
太陽光発電と農業を両立する手法として、近年、国内で大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」。その背景や今後の展望、運用面のポイントなどについて、千葉エコ・エネルギーの馬上丈司氏が解説する。 - 最新データで読み解く「ソーラーシェアリングの今」【トラブル・作物・都道府県別状況編】
太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は農林水産省が2020年3月に発表した最新のデータから「ソーラーシェアリングの今」を読み解きます。後編となる本稿では、営農におけるトラブルや栽培されている作物、一時転用許可期間「10年ルール」の動向や、都道府県別の導入数などのデータを読み解きます。 - 農林水産省が発表した「環境政策の基本方針」、再エネ・ソーラーシェアリングの扱いは?
太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は2020年農林水産省が2020年3月に発表した「環境政策の基本方針」において、再エネやソーラーシェアリングがどのように位置づけられているのかを解説します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.