写真で見るソーラーシェアリング倒壊事故、安全な設備設計に必要な視点とは:ソーラーシェアリング入門(35)(2/2 ページ)
「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は台風などの自然災害によるリスクを考慮した発電設備の設計について考えます。
台風などでのトラブル事例:設備の倒壊
自然災害による最も深刻なトラブルが、ソーラーシェアリングの設備倒壊です。台風に伴う暴風によるソーラーシェアリングの設備被害は、単管パイプによる施工が主流だった2015年頃からよく耳にするようになりました。その後、2018年の台風21号と台風24号、2019年の台風15号では関東・東海・関西の広い範囲で設備の損壊が発生しましたが、残念ながらその中で全壊に至る事例も目にするようになっています。
架台設計が藤棚式なのかアレイ式なのか、藤棚式でも可動式が採用されていたのか、架台の素材は鉄なのかアルミ材なのか、はたまた単管パイプなのかといった状況が異なるため、それぞれの被害度合いや推定される原因も千差万別です。
全壊するような規模の被害では、単管パイプによる藤棚式の場合は支柱の根元から座屈してしまうパターン、アルミ架台による藤棚式ではスクリュー杭のフランジと支柱の接合部が破断するパターン、アレイ式ではスクリュー杭ごと地面から抜けてしまい、架台がひっくり返るパターンなど色々な事態が発生しています。一つの事例として、台風により倒壊してしまったソーラーシェアリングの写真を掲載しておきます(合同会社小田原かなごてファーム提供)。
台風は夏から秋にかけて襲来するため、設備が倒壊すると上記の写真にある稲を含め、収穫前のさまざまな作物が甚大なダメージを受けてしまうことになります。これが1年生の作物では無く果樹などであれば、その被害と回復に要する時間はさらに大きなものになるでしょう。また、こうした事故の際は原因追及も複雑化します。事故原因が架台そのものの設計なのか、施工やメンテナンスの問題なのかなど切り分けが非常に難しく、最終的に発電事業者が損害を負担せざるを得なくなります。
メーカーや施工会社の言い分を鵜呑みにせず、発電事業者が自らの事業への責任として善し悪しを判断する目を養うことが大切です。
ここまで、今回を含めて3回にわたってソーラーシェアリングの架台選びを取り上げてきましたが、共通して考えなければならないのは農業と太陽光発電事業をいかにうまく共生させるかです。まだ国内では野立てに比べて圧倒的に事例数が少ないこともあり、メーカーも施工業者もソーラーシェアリングに熟練しているといえる先は、大手・中小問わずほとんど見当たらないのが現状です。
事例の少なさは情報の少なさにもつくがるため、改めてソーラーシェアリングに取り組もうと考える皆さんの参考になればと、架台をテーマに連続して記事にまとめてきました。今後も引き続き、実際の事例をベースにより良いソーラーシェアリングの実現に必要な情報を発信していきます。
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