日本が目指す「温室効果ガス46%削減」、その実現に必要な再エネ導入の「現実解」を考える:ソーラーシェアリング入門(45)(3/3 ページ)
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は4月に菅総理大臣が公表した日本の新たな気候変動対策目標について考察します。「2030年時点で2013年度比46%の温室効果ガス削減」の達成に求められるものとは?
現実的な選択肢としての太陽光発電とソーラーシェアリング
残された時間と、それぞれの再生可能エネルギー電源の導入に必要なリードタイムを勘案すると、現実的な選択肢は太陽光発電ということになります。2012年度から始まった全量FIT下では、開始から2年目の2014年度に単年度で9GWを越える新規導入が行われました。
2030年の再生可能エネルギー比率を40〜50%まで高めると考えた場合、必要となる追加的な太陽光発電の導入規模は、最低でも1億kW(設備利用率13%想定)です。過積載を考慮した資源エネルギー庁が用いるACベースの出力(設備利用率23%想定)に換算すれば、5000万kW程度となり、10年間に均しても毎年500万kWの導入が必要になりますが、現在の状況は下記の資源エネルギー庁が示したデータ(2019年度までの青い棒グラフ部分)の通り、単年度でギリギリそれを満たしている水準で、FIT制度下における太陽光発電の導入抑制の結果、今後はさらに大きく減少することも予想されます。
図中では2021年度以降に段階的に市場を再構築していくイメージが記載されていますが、今のところ具体策は何も示されておらず、その結果が2030年に向けた試算値で示されている「さらなる検討が必要」という表記だと考えられます。まずは、太陽光発電事業におけるプレーヤーもノウハウも国内市場で喪失しつつある状況と、2014年度を越える単年度導入量を今後継続し続けていく必要を政策側が認めた上で、最大限の導入拡大のために従来の概念に囚われない政策動員をする覚悟が必要になるでしょう。
4月23日には、私が専務理事を務める一般社団法人太陽光発電事業者連盟(ASPEn)として営農型太陽光発電による2030年の再生可能エネルギー導入量+10%を目指す提言を出しましたが、これも投資拡大や事業開発の促進に政策の総動員が必要であることを記載しています(クリックで提言の詳細ページへ)。
次回は今回のテーマの延長として、ソーラーシェアリングのポテンシャルを踏まえた2030年に向けた再生可能エネルギー導入計画について取り上げます。
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