5%の農地に再エネ2000億kWhのポテンシャル、ソーラーシェアリング普及に向けた課題とは?:ソーラーシェアリング入門(46)(3/3 ページ)
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は日本の新たな温室効果ガス削減目標の達成に向け、ソーラーシェアリングが果たす役割とそのポテンシャル、そして今後の普及に向けた課題について解説します。
営農を担う人材・組織の確保が課題に
最後に農業側の観点からの課題として、2018年の一時転用許可期間の見直しによる10年以内の許可が認められるようになった以降の流れで、兼業農家や法人組織経営体によるソーラーシェアリングへの取り組みが進みにくい状況が挙げられます。
FIT制度でも2020年度から地域活用要件の例外として特定営農型太陽光発電という枠が設定され、3年以上の一時転用許可を受ける場合には低圧規模でも全量買取が適用されていますが、これらの要件を充足するには第2種・第3種農地を使うか荒廃農地を再生する以外では、営農者が担い手・認定農業者である必要があります。
しかし、2020年の農林業センサスによると認定農業者となり得る農業を主業とする個人経営体は全体の22%にとどまり、残りの約80万経営体は準主業あるいは副業的経営体です。こうした兼業農家を含む、農業を主業としない経営体によるソーラーシェアリングの実施に対する支援が不十分なままです。農地行政における経営体の集約や法人化・大規模化を促す方向だけでなく、長年にわたって副業的に農業を支えてきた多様な経営体が、ソーラーシェアリングに前向きに取り組めるような施策が必要です。
2030年に向けて
農林水産省は、2050年に向けて国内の再生可能エネルギーの50%を農山漁村で生産するという目標設定を検討しています。実際には、太陽光発電から水力発電やバイオマス発電に洋上風力発電まで多くの再生可能エネルギー源は農山漁村において資源の賦存量が大きくなりますから、50%を越えることも容易でしょう。
その前段階となる2030年に向けての時間は、そもそも再生可能エネルギーとはどういった場所で効率的に生産できるのか、私たちはその導入拡大のためにどれだけの投資を行っていくのかといった社会的な理解の促進と合意形成を図り、目先の導入量を増やしながらその先のさらなる飛躍的導入に向けた準備も積み上げていくことになります。
ソーラーシェアリングは再生可能エネルギー導入量の拡大に貢献するのみならず、再生可能エネルギー事業は何のために行うのかを私たち自身が問い直すための、大きなきっかけにもなっていくでしょう。
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