太陽光パネルの下では何が育つ? ソーラーシェアリングにおける農業生産の最新動向:ソーラーシェアリング入門(47)(2/2 ページ)
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は筆者の実践をもとにした、最近のソーラーシェアリングにおける農業生産について解説します。
地元の伝統野菜の栽培にも挑戦
最近では先に挙げた一般的な野菜のほかに、地域に根付いた農業にも関わっていきたいと考え、地域で伝統的に栽培されてきた作物の生産も行うようになりました。私たちの農場がある千葉市緑区大木戸町は、旧土気町の区域にあたり、伝統野菜として「土気からし菜」が300年以上前から栽培されています。種子も地域内の農業者による自家採種で保存されてきており、昨年から地元の生産組合の指導を受けて栽培に取り組み始めました。
「土気からし菜」はもともと緑肥として生産されてきたものでしたが、旧土気町の区域は千葉市内でも標高が高く寒暖差のある気候のため、からし菜が独特の辛味・風味を出すということで漬物などとして出荷されています。若手の新規就農者である私たちが、こうした伝統野菜の栽培にも関わっていくことで、地域の農業の発展にも貢献できればと考えています。
ソーラーシェアリングの環境を生かした農業生産の多様化
こうして数年かけて多くの作物がしっかりと生産できることが確認できた中で、以前も紹介したように農業に投入するエネルギーの電化による再生可能エネルギーへの転換や、農業IoTの導入をこれまで以上に進めていきたいとも考えています。また、今年度も千葉エコ・エネルギー株式会社として農林水産省の営農型太陽光発電システムフル活用事業の採択を受けたことで、ソーラーシェアリングを軸とした農業に活用するエネルギーの地産地消化をさらに進めていきます。
従来の農業生産から、こうした再生可能エネルギーを取り入れた真に持続可能な次世代農業への転換を図ること目指す中で、これからの農業を担う若い世代への浸透というのも一つの課題になっています。次回は、ソーラーシェアリングという現場を生かした農産物の販売と次世代育成について紹介します。
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