ソーラーシェアリングの成功に欠かせない、販売戦略と次世代育成の重要性とは?:ソーラーシェアリング入門(48)(2/2 ページ)
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングという現場を生かした農産物の販売や、次世代育成などの取り組みについて紹介します。
次世代の育成も重要なテーマ、事業を続けていくために
もう一つの取り組みとして、次世代を担う若者たちへのフィールド提供を通じた農業・再生可能エネルギーへの理解を深めてもらうプロジェクトを続けています。自社農場としてスタートした初年度から、農業イベントなどを通じて広くソーラーシェアリングというものを体感してもらう機会を設けてきました。そういったスポットでの取り組みに加えて、昨今は学生団体などと連携して継続的な関わりを増やしていくことにも注力しています。
今年4月からは、NPO法人国際ボランティア学生協会(IVUSA)の協力を得て、スタディーツアーとして所属する大学生が定期的に大木戸へ足を運び、ソーラーシェアリングとその下での農業や地域の実情を体験してもらうことで、持続可能な地域作りの課題を知り社会的なアクションを起こすきっかけ作りを提供しています。
ソーラーシェアリングは農業者の所得向上を図る取り組みとして政策がスタートしましたが、現在は気候変動対策における再生可能エネルギーの導入拡大や農業における脱炭素化への貢献、農業の電化をきっかけとした「AgTech(Agriculture Technology)」などの導入、地域内でのエネルギーの自給自足による災害対策など幅広い観点からその必要性が認知されてきました。しかし、こうしたフレームだけを作り続けても、実際に当事者となっていく次の世代を担う若者に認知・受容されなければ、何の意味もありません。
エネルギー政策や農業政策に限らず、残念ながらの日本では次世代への教育をおろそかにし続けたツケがもはや払いきれなくなっており、地域の将来を担う人材が各地で枯渇してしまいました。少子化問題が少母化問題に至ったことで、多くの地域にとって人口減少問題が解決不可能な領域に達し、今後10〜20年で団塊の世代が大きく減少していけば再起不能になる地域が頻出してくることはもう避けられません。その変化の時代を克服する地域を一つでも多く作るために、私たちの取り組みを通じて次世代に持続可能な社会というバトンをつないでいきたいと思います。
関連記事
- 太陽光パネルの下では何が育つ? ソーラーシェアリングにおける農業生産の最新動向
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は筆者の実践をもとにした、最近のソーラーシェアリングにおける農業生産について解説します。 - 最新データで読み解く「ソーラーシェアリングの今」【トラブル・作物・都道府県別状況編】
太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は農林水産省が2020年3月に発表した最新のデータから「ソーラーシェアリングの今」を読み解きます。後編となる本稿では、営農におけるトラブルや栽培されている作物、一時転用許可期間「10年ルール」の動向や、都道府県別の導入数などのデータを読み解きます。 - 発電事業ありきは本末転倒、ソーラーシェアリングの普及に必要な営農者の視点
太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は2019年9月に開催された「全国ソーラーシェアリングサミット2019 in 柏」を通じて見えた、日本のソーラーシェアリングの課題と今後の展望について考察します。 - ソーラーシェアリングの成功に欠かせない、農作物の選定と設備設計のポイント
太陽光発電と農業を両立する手法として、近年、国内で大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングの成功に欠かせない、農作物の選定と設備設計のポイントについて解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.