再エネ大幅増の「エネルギー基本計画」、太陽光の導入拡大策が焦点に:太陽光(2/2 ページ)
経済産業省が新しい「エネルギー基本計画」の素案を公表。2030年における電源構成は、再生可能エネルギーを36〜38%と大幅に引き上げる目標とした。今後、太陽光発電のさらなる導入量拡大に向けた政策の立案が焦点となりそうだ。
再エネ比率「36〜38%」はどう達成するのか?
そもそも今回の素案の前提にあるのが、「46%削減」の達成には、電源構成における非化石電源の割合を約6割にまで引き上げる必要があるという試算だ。経済産業省ではこの前提にもとづき、特に再生可能エネルギーの導入量をどこまで積みませるかの検討を進めてきた。
具体的には、環境省や国土交通省、農林水産省など、各省の管轄領域において、「どこでどれだけの導入量を積み増せるか」を検討してきた形だ。その結果出てきたのが、2030年度における再生可能エネルギーの発電量は3126億kWhという試算で、これは現行目標より約2割多い発電量である。この試算における各再生可能エネルギーの2030年における累積導入量は、太陽光は100GW(現行のエネルギーミックス水準:64GW)、陸上風力は15.9GW(同:9.2GW)、洋上風力は3.7GW(同:0.8GW)、地熱は1.5GW(1.4〜1.6GW)、水力が50.6GW(同:48.5〜49.3GW)、バイオマスは8.0GW(同:6〜7GW)である。
一方、今回の素案で記載した再生可能エネルギー比率36〜38%は、発電量に換算すると3300億〜3500億kWhとなる。つまり、これまでの検討における導入量に加え、さらに200〜400億kWhの発電量を積み増す必要があるという試算だ。
では、どのように再生可能エネルギーを積み増すのか。素案では以下の4つの方針を掲げる。
- 系統増強や蓄電池の設置を通じ、北海道を中心とした洋上風力の導入拡大(4GW程度)
- 環境省と農林水産省の連携による改正温暖化対策推進法、農山漁村再エネ法に基づく促進区域の設定による導入促進
- 民間企業の自家消費型太陽光への支援
- 現行目標を未達の電源(地熱、小水力など)への支援
北海道に4GW程度の洋上風力の導入など、具体的な記載がある電源もあるが、開発速度などの兼ね合いから、現実的に「積み増し」の主要電源となるのは太陽光となりそうだ。今後の各省庁が推進する、積み増しに向けた導入施策の内容に注目したい。
「野心的」か「帳尻合わせ」か
今回の新たなエネルギー基本計画の検討にあたっては、「2030年度までに温室効果ガス46%削減」という目標がトップダウンで決まった背景もあり、現在の延長から考える積み上げ式ではなく、「ありたい将来の姿」から逆算する「バックキャスト」での計画立案が求められた。それ故に各数値目標については「野心的なもの」というエクスキューズが目立つ素案となった。特に再生可能エネルギーについては、これまでの検討会の中で「これ以上の積み上げは簡単ではない」とされた目標から、さらに積み増しを目指す結果となっている。
再生可能エネルギーの積み増しも高いハードルだが、20〜22%という原子力発電の目標も容易ではない。目標の達成には、これまで原子力規制委員会に安全審査の申請がされた27基全ての再稼働が必要となるが、現時点では10基の稼働にとどまっている。加えて、法定で定める運転上限に達する発電所の扱いも定まっていない。こうした背景から、素案を公表した有識者会議では、委員からその内容の実現性を疑問視する声も上がった。
素案は今後、有識者会議などでさらに内容の検討を進め、パブリックコメントを経たあとで閣議決定される。
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