熱水を使わない革新的な「CO2地熱発電」、大成建設らが技術開発へ:自然エネルギー
大成建設が、CO2を活用する熱水資源に頼らない新たな地熱発電技術の開発に着手すると発表。熱水のかわりにCO2を圧入して熱回収を行う新技術で、地熱発電の普及課題を解決できる可能性があるという。
大成建設は2021年8月23日、地熱技術開発と共同で、CO2を活用する熱水資源に頼らない新たな地熱発電技術の開発に着手すると発表した。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から公募された地熱発電技術研究開発事業「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」に採択されたもの。
一般的な地熱発電は、地中で温められた蒸気を含む熱水をくみ上げてタービンを回転させることによって発電を行う。しかし、他の再生可能エネルギー電源と比較し、事前の資源調査から事業化までに時間が掛かる他、ボーリング調査により地層中が十分に高温であることが確認されても、熱水量不足により、発電には適せず事業化に至らないといったケースがある。
こうした背景から、日本は豊富な地熱資源を保有しながらも、国内の総発電電力量に対する地熱発電電力量の割合は0.3%に留まっている。そのため、今後、地熱資源の有効活用による地熱発電事業を加速するためには、熱水に代わる新たな地熱発電技術の開発が求められている。
今回、大成建設と地熱技術開発は、地熱によって高温状態となった地層中にCO2を圧入し、熱媒体として循環させることで地熱資源を採熱する、熱水資源に頼らない地熱発電の技術開発を目指す。
具体的には、高温状態にあるが熱水量不足によって従来技術では地熱発電に適用できなかった地熱貯留層中にCO2を圧入する。深い地盤中では温度と圧力が高いため、CO2は液体・気体の両方の性質(高密度、低粘性)を持った超臨界状態となる。この高温になったCO2を回収することで地熱発電を行うという。
これまでの研究によれば、高温高圧下でのCO2の物性は高効率に地熱資源を採熱する上で有利であると考えられているという。また、圧入されたCO2の一部は、地熱貯留層中に炭酸塩鉱物などとして固定されるため、カーボンニュートラルへの貢献も期待できるとしている。
今回の事業期間は2021年度から2025年度の5年間を予定している。この5年間ではまず、CO2地熱発電のための全体システム設計、CO2を破砕流体とした人工地熱貯留層造成技術、地熱貯留層内でのCO2流体挙動把握技術の開発を目指す方針だ。
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