東芝が「曲がる」太陽電池で世界最高の変換効率、フィルム型ペロブスカイトで:太陽光
東芝がフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールでエネルギー変換効率15.1%を達成したと発表した。703cm2のモジュールで、このサイズにおける変換効率としては世界最高(同社)としている。
東芝は2021年9月10日、フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールでエネルギー変換効率15.1%を達成したと発表した。703cm2のモジュールで、このサイズにおける変換効率としては世界最高(同社)としている。
ペロブスカイト太陽電池は、溶液を塗布するという手法で低コストに製造でき、かつ現在主流のシリコン系太陽電池並みの変換効率が見込める次世代太陽電池として注目されている。また、フレキシブルで曲げられるフィルム型のペロブスカイト太陽電池は、従来、太陽電池を設置できなかった耐荷重性の低い建築物や壁面壁への設置など、新たな設置場所を開拓できるとして期待されている。
東芝は2018年6月にペロブスカイト太陽電池として世界最大(同社)という703cm2のモジュールを開発していたが、今回このサイズを維持しながら、新たな成膜プロセスを開発したことで、変換効率の向上に成功したという。
開発した成膜法は、従来2段階で行っていたペロブスカイト層の成膜を、1段階で行うもの。2段階の方法では成膜プロセスの高速化とペロブスカイト層組成の均一化に課題があったが、インク、成膜プロセスおよび装置の開発を行うことで、大面積に均一塗布することが可能な1段階の成膜技術を確立したという。
この技術は塗布速度も高速化が可能で、5cm角のセルでは、量産時に必要と想定されるスペックを満たす6m/分の塗布速度を達成しており、大面積の成膜プロセスではさらなる高速化が見込めるとしている。この技術により、従来困難であった生産プロセスの高速化とエネルギー変換効率の向上が両立できるため、発電コスト低減への貢献も期待できるとした。
東芝では今後、実用化サイズとして想定される、受光部サイズ900cm2を目指してさらなる大面積化を進めるとともに、ペロブスカイト層の材料改良などに取り組み、エネルギー変換効率20%以上の実現を目指す。2025年度に量産製品の市場投入を目指す考えだ。
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