今後のソーラーシェアリングはどうなるのか、3つの方向性と将来展望:ソーラーシェアリング入門(55)(2/2 ページ)
ソーラーシェアリングについて解説する本連載。今回は前回に引き続き、農林水産省の有識者会議の内容を紹介しつつ、筆者が今後予想されるーラーシェアリングの動きと検討すべき課題、そして今後の見通しを紹介します。
出ては消える新技術、着実な定着に必要な条件とは?
最後に新技術の導入ですが、ソーラーシェアリングが普及し始めてから9年という時間を振り返ると、太陽光パネルや架台設計、農業技術にまでさまざまな「新しいモデル」が提案されてきました。ただ、そのいずれもがソーラーシェアリングそのものの市場拡大がまだまだ不十分だったこともあり、世に出ては消えていくということを繰り返しています。
こうしたこれまでの流れも目の当たりにしていると、この先も単に新しい技術というだけでは市場に受け入れられないだろうと思います。有識者会議の事務局資料でも太陽光パネルの多様化がフォーカスされていますが、これまでも透過型や薄型の太陽光パネルを使おうという動きがあったものの、農業者の所得向上というソーラーシェアリングの当初目的から、第一には発電事業の採算性が重視されたこと、また農業側の電力自家消費需要が大きくなかったことなどから、変わり種の製品がぽっと出ては消えていきました。
こういった新技術の導入は、ソーラーシェアリングの市場が十分に拡大していくことで、ソーラーシェアリングに期待されている社会的な価値を高めることが明らかなものであれば普及しやすいでしょう。逆に特殊な条件・環境が要求されたり普遍性がないようなものだったりすると、これまでと同様に、生まれては消えてを繰り返していくだけに終わるでしょう。特に設備構造の部分では、やっとNEDOによる設計・施工ガイドラインが整いつつある段階ですから、まずはそこで足場固めをした上で、新たな設計モデルがあれば個別に検証していくという流れをたどることになると考えられます。
ソーラーシェアリングは新たな段階ーー「3.0」の時代へ
ここまで3回にわたって営農型太陽光発電の有識者会議の課題整理を取り上げてきましたが、やはりこれだけの課題抽出と議論が、農林水産省主導で行われたことの意義は大きいと感じます。
事務局からはこれまで明らかではなかった情報が提示されたほか、農業界からも主要なプレーヤーが参画しての議論となり、各地の実践者達が現場で積み上げてきたソーラーシェアリングの取り組みがやっと体系的に政策の場面でも取り上げられ、その整理とさらなる発展の方向性を見出すきっかけとなったように思います。
この有識者会議の開催に際して、私もこれまでの国内におけるソーラーシェアリングの歴史を振り返り、設備・農業・経営・政策の観点から整理を進めています。2013年3月末の農林水産省による営農型太陽光発電についての通知発出を起点とすると、2013〜2017年頃、2018〜2021年頃がそれぞれ大きな区切りとして捉えられ、ここから先は「ソーラーシェアリング/営農型太陽光発電3.0」と言える新たな段階に入っていくと考えています。
太陽光発電が国内の再生可能エネルギーの主力を担っていくなかでのソーラーシェアリングの役割、VEMSを軸にしたスマート農業の基盤電源としての活用、そして設計・施工ガイドラインや今回の有識者会議のような体系だった整理が進む先に、新たなソーラーシェアリング/営農型太陽光発電のステップが見えるはずです。
次回は、この「ソーラーシェアリング/営農型太陽光発電3.0の時代」をテーマとして取り上げます。
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